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「もう自殺を考えない。ただ、練炭は…」一度はネット心中を“止める側”になった若者が自死を選んだ理由

「もう自殺を考えない。ただ、練炭は…」一度はネット心中を“止める側”になった若者が自死を選んだ理由

2023/01/04

genre : ニュース, 社会

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国・業界団体の対応やガイドライン

 ネット心中の連鎖にどう対応すべきか。国も対応を急いだ。05年3月には厚生労働科学特別研究で「Webサイトを介しての複数同時自殺の実態と予防に関する研究」があった。また05年10月、業界団体は「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン」を策定した。人命保護の観点から、警察から照会があった場合の電子掲示板などの個人情報開示の基準を定めている。

 06年には自殺対策基本法が制定され、07年6月の自殺総合対策大綱にも、ガイドラインのことが触れられた。その後の改定では、インターネット・ホットラインセンター(IHC)の取り組みにも言及された。警察から委託された事業だが、通報を受けると、事業者や管理者に削除要請をすることになる。警察としても、サイバー犯罪の部門を強化し、IHCに通報する体制をとっている。

 そんな中、17年10月に座間市男女9人殺人事件が発覚する。厚生労働省は、LINEなどのSNSを利用した自殺相談を民間団体に委託する事業を始めた。希死念慮がある若年層のネットユーザーが、Twitterなどで「死にたい」などとつぶやいていたことで、SNSでの声を掬い上げることが狙いだった。

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 しかし、一定の相談者がいるものの、若年層の自殺者、特に10代の自殺者が減少していない。むしろ、増加傾向にある。自殺する若者たちの声をSNSで聞くだけでは自殺は減らないことを示したのではないか。22年の自殺総合対策大綱改定内容も、これまでの踏襲で、新たな取り組みは示されず、事実上手詰まり感がある。ネット心中が社会問題になってから20年が経つが、インターネットでSOSを出す若者たちを十分に救い切れる制度は残念ながら整備されていないのが実情だ。

◆ ◆ ◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

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