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〈東京に行って、北に向かいます〉とメール

 そうした時、9月中旬、ミホから〈関東の20代男性と会う〉とのメールが届く。

〈東京に行って、北に向かいます〉

「死んで欲しくない」と思っていたミノルは、止めようと思い、心中志願を装って、

〈僕も仲間に入れてくれ。待ち合わせ場所はどこ?〉

 とメールを送った。なかなかミホから返事が来ない。返信は遅かったが、〈家に帰りました〉とのメールが届く。本当に帰宅したのかどうか不安だったミノルは、会った時の話や着ていた制服、学校のホームページから、関西にある学校名を割り出し、翌日になって学校に連絡した。ミホが行方不明になっていたため、担任が快く対応した。そんな中、ミノルのもとに再びメールが届いた。

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〈計画は中止になりました。山梨県でさまよっています〉

 警察署で会えた母親がミホの部屋を案内してくれた。そこには、樹海の資料や地図があった。ミノルは「ミホはきっと樹海にいる」と思い、山梨県警富士吉田署に通報。両親は山梨県に向かった。

ミノル〈河口湖駅に戻りな〉

ミホ〈どうして場所が分かっちゃったの?〉

 これを最後にメールが途絶える。

 翌朝、北関東の警察から、自宅に遺体発見の連絡があった。スキー場の入り口で練炭自殺をしていたのだ。偶然、通りかかった人に発見された。携帯電話等の遺留品からミホだということが判明した。樹海の資料や地図は完全にフェイクだった。決行直前はファミリーレストランで食事をしたり、直前まで他のメル友と普通の会話のやりとりをしていたこともわかった。

「お守り」と言っていた練炭を使ってしまったミノル

「場所が見当違いだった。『東京に行きます』とのメール以降は、全部嘘なんじゃないか。おそらく、相手の男性の指示でしょう。その男性は僕を警戒していたと思う。亡くなったことは残念だった。それまでは正直に話してくれていたので、嘘のメールを送るのもミホは辛かったかもしれない。

 今となっては、(自殺が)ミホの意思だと思うので、後悔はないです。(ネット心中の成功例から考えてみれば)淡々と進めばこうなるんだろうな。無理矢理生きても苦しいだけだし。ただ、思うのは、もう少し早く両親に会うことができれば、違った結果になったかもしれません」

©️iStock.com

 ミホに思いとどまるよう説得していたミノル自身も、後日、部屋の中で練炭自殺した。交際していた女性と喧嘩した翌日、「連絡がつかない」と彼女からメールがあった。住所を知っていた筆者は、最寄りの警察署に電話。結果、一人で自殺していたことがわかった。

 ミノルは「もう自殺を考えない。ただ、練炭はお守りとして取っておく」と話していたが、筆者はその練炭が自殺の手段になり得るため、知人らとどうにかしようと話していた中での出来事だった。