二〇二二年は、DVD化を待ち焦がれていた旧作邦画のタイトルが、各レーベルから次々と発売された。この年の瀬は、そんな一年を締めくくるにふさわしいラインナップが並ぶ。それは、これまでDVD化されてこなかった五社英雄監督の作品たちだ。
没後三十年となる今年、映画会社を横断して一気に発売された。既に夏に東映とフジテレビからも出ているが、年末はさらに松竹から『獣の剣』『五匹の紳士』『十手舞』が続き、東宝からは今回取り上げる『出所祝い』が来る。
一九六〇年代、東宝は健全娯楽を看板にサラリーマン映画、青春映画、特撮映画で売ってきた。だが、六〇年代末、それが全く当たらなくなる。そこで、これまで否定してきたヤクザ映画に手を出したのが、本作だった。東宝からすると満を持しての企画だけに、上映時間百三十一分という大作映画の構えになっている。
そして、東宝にはこの路線を任せられる監督がいなかったため、当時フジテレビのディレクターで映画監督としてもヒット作を連発していた五社英雄が撮ることになった。
キャストも、仲代達矢、丹波哲郎、田中邦衛、夏八木勲といった五社作品のレギュラー組に加え、安藤昇、江波杏子という他社の任侠作品で実績のあるスター、東宝専属の黒沢年男に若手人気スターの栗原小巻――と実に多彩だ。
舞台は昭和初期の青森界隈と思しき、東北の地方都市。材木の利権を巡り榎家と観音組という二つの組織が反目し合っていたが、政界の黒幕(丹波)の仲介で手打ちをすることになる。だが、両者のしこりは根深く、やがて対立が表面化していくことに。
これだけならよくある任侠映画の設定なのだが、そこは五社英雄。さまざまに工夫を凝らしており、唯一無二の娯楽作品に仕上げている。
たとえば、荒波が打ち寄せる海岸。そこに仲代がたたずむだけで、何やら文学的な情感と、ただならぬスケール感が醸し出される。砂浜に打ち上げられた廃船も、背景にアクセントをもたらしていた。
また、和装の双子の女性殺し屋コンビも強烈なインパクトを残す。ターゲットに音もなく近づき、和傘に仕込んでいた刃で次々と刺殺。二人に狙われたら最後、逃れられない。無表情のまま淡々と殺す様はひたすら恐ろしい。
そして、ラストの仲代vs.夏八木の決闘がまたいい。夜の砂浜を舞台に斬り合うのだが、殺陣自体の激しさに加え、背景に映る荒々しい白波や、バックに流れる津軽三味線の狂騒的な調べが、激闘の迫力をさらに盛り上げていた。
この年末年始を熱く過ごさせてくれる一作である。