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連載春日太一の木曜邦画劇場

五社英雄没後30年。前期作品のアクション時代劇の集大成を見よ!――春日太一の木曜邦画劇場

『御用金』

2022/09/20
1969年(123分)/フジテレビジョン/4180円(税込/写真はBD版5170円)

 五社英雄は、この八月末で没後三十年を迎えた。

 それに合わせて、これまでDVD化されていなかった映画が次々と発売、前回の『人斬り』もそんな中の一本だ。

 そして、『人斬り』とともにBlu-ray&DVDで発売になったのが、『御用金』。VHS時代も含め、日本でのソフト化自体が初となる。フランス版のVHSをなんとかして入手していた二十年前を思うと、なんとありがたいことだろうか――。

 そこで今回は、この『御用金』を取り上げることにする。

 五社作品というと、「女性の情念を描いたドラマ」の印象が強い人も多いだろう。ただ実は、それはキャリア後期のことだったりする。所属していたフジテレビを離れ、『鬼龍院花子の生涯』を大ヒットさせてからの作風なのだ。

 それ以前、フジテレビジョンフジテレビに所属していた頃は全く正反対の作風だった。それは、いかに迫力あるアクションを撮るか。そのことへの演出に、ひたすら情熱を燃やしていたのだ。

 この『御用金』は、そんな前期五社の集大成ともいえる、アクション時代劇になっている。フジテレビが初めて映画製作に進出した本作は、仲代達矢、中村錦之助、丹波哲郎、司葉子、浅丘ルリ子といった超豪華キャストが組まれ、雪国を舞台にした壮大なスケールの物語が展開される。

 ここで五社は、さまざまに工夫を凝らした舞台設定を用意。その映像効果を存分に活かす形で、ド迫力のアクションを創出していった。

 たとえば中盤。ゴーストタウンと化した宿場町での、仲代と夏八木勲の率いる刺客軍団との決闘シーン。ここで仲代は廃屋に籠り、数的不利を解消しようとする。それに対して夏八木は建物もろとも仲代を焼き殺さんと、火をかけるのだ。そして、雨が降りしきる中、両陣営の壮絶な大乱闘が繰り広げられていく。

 クライマックスの舞台は、岬の岸壁に建てられた物見櫓だ。雪の斜面を転がりながら、あるいは雪の降りしきる浜辺で、男たちは斬り合う。背景で燃え盛る薪火もあいまって、雪景色を熱気あふれるものとして映し出していた。

 そして最後は、大雪原での仲代と丹波の一騎打ちだ。松明で手を温めながら現れる丹波。一方の仲代は自らの息で手を温める。互いに放たれる白い息が緊張感を伝え、両者の間を飛び交う烏の群れが不穏さをかきたてる。そして、決着は一瞬の居合いで決まる。純白の雪原を真赤に染めながら、剣を交える両雄――。

 高木に吊るされたり、崖をよじ登ったりと、監督に応えて身体を張りまくる仲代も見事。前期五社ならではの大アクション、とくとご堪能あれ。

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