今から20年前の2003年、スタジオジブリ制作の映画『千と千尋の神隠し』(2001年)がアカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した。日本の長編映画がアカデミー賞を受賞したのは1956年以来47年ぶり、さらに長編アニメ映画賞を受賞したのは初の快挙だった。

 日本国内では、公開から約20年間も興行収入歴代No.1を維持し続けてきた国民的アニメ映画。主人公「千尋」を演じたのは、公開当時13歳だった女優の柊瑠美さん(35)だ。「千尋」役が声優初挑戦だったという柊さんに、出演のきっかけや、アフレコのエピソードを聞いた。(全3回の1回目/2回目に続く

『千と千尋の神隠し』より

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オーディションで「夢だ夢だ!! 覚めろ覚めろ!!」とカセットテープに録音

――まずは、『千と千尋の神隠し』に出演したきっかけを教えてください。

柊瑠美さん(以下、柊) 当時所属していた事務所から「このオーディションを受けてください」と言われたのがきっかけです。オーディションを受ける時点ではストーリーもほとんど明かされていなかったから、「よくわからないけど、アニメ映画のオーディションなんだな」くらいのテンションで受けていました。

――ちなみに、もともとジブリ作品は好きだったのでしょうか?

 実は、当時はジブリ自体をよく知らなくて。『となりのトトロ』(1988年)や『魔女の宅急便』(1989年)は見たことがありましたけど、それがジブリ作品だということや、宮崎駿監督が手がけたものだとは認識していませんでしたね。

――オーディションではどんなことをされたのでしょう。

 カセットテープに指定されたセリフを吹き込んで、それを送りました。面接は一切なかったです。

ジブリ映画『千と千尋の神隠し』で千尋役を務めた柊瑠美さん ©石川啓次/文藝春秋

――どのシーンのセリフを吹き込んだのですか。

 映画の序盤、千尋が不思議な世界に迷い込んで混乱しているシーンです。「あ、柊瑠美です。千尋やります」と前置きをして、「夢だ夢だ!! 覚めろ覚めろ!!」「あぁ、透けてる!!」ってセリフを吹き込みました。

 家族に聞かれるのが恥ずかしいから、クーラーのついていない真夏の暑い部屋に閉じこもって録音したのを今でも覚えています(笑)。