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私がオープナー戦術を採る理由

 シーズン開幕直後の4月2日、対東北楽天ゴールデンイーグルス戦でオープナー戦術を使ってみました。先発の加藤貴之が3回を無失点で抑えてくれましたが、4回からジョニー・バーベイトにつなぎます。彼にも3イニングを任せ、失点1で踏ん張ってくれました。そこからは、4人の投手を送り込みました。この試合は1対3で敗れてしまいましたが、私自身はオープナー戦術に手ごたえを得ました。

 オープナー戦術は先発投手の層の薄さを補うもの、という考えかたが広がっていると感じます。リリーフ陣の登板回数が増え、シーズン終盤に疲弊してしまうのでは、との指摘もあります。「無謀だ」とはっきり言われることもあります。

 選手のコンディションには、細心の注意を払っています。絶対に無理はさせません。ケガ人はチーム全体の損失です。

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 私がオープナー戦術を採るのは、目前の試合に勝つ確率を1パーセントでもあげるためです。同時に、野球の可能性を掘り起こしたい気持ちがあります。

©文藝春秋

自分の想念を「無の境地」に置く

 セオリーや定石と言われるものができあがっているけれど、まだまだ違うやりかたがあると信じています。19年の私の成功も失敗も、これからの野球界の道しるべになればいい。参考程度でもいい。後に続く世代の指導者たちが、きっとうまく生かしてくれると思っています。

 野球はもっと奥深い。セオリーや定石、常識といったものにとらわれず、新しいものを生み出していきたいのです。

 その過程で批判を受けても、気にしません。坂本龍馬も批判の理由を誰かに押し付けたり、誰かを責めたりはしなかった。まずは我が身を省みて、問題点をあぶり出した。そして、精進を重ねていったのでは、と思います。

 周囲からどう評価されているのか、という不安や心配から自らを解き放って、自分の想念を「無の境地」に置く。そうすると、問題の所在がよく見えるようになります。よく見えるのですから、解決の糸口も明らかにできる。物事はスムーズに進むわけです。

 私利私欲にとらわれず、国の未来を案じて行動した龍馬のように、私は野球に対して「仁」と「義」を貫きたいのです。