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職場復帰へ向けて
「ところで、職場復帰へ向けての確認です。中距離で、荷物の積み下ろしをしなくてもよい部署への配置転換はいかがですか?」
正樹「ああ、前に少しやったことがある、あそこかな」
「ただ、距離が短い分、若干給与は下がることになります」
正樹「独り身だし、今の給料で余裕がありましたから、そこは大丈夫です」
「わかりました。いつから復帰を希望しますか?」
正樹「その仕事なら、来週からでも構いません」
「今から、人事担当者に電話をかけてもいいでしょうか?」
正樹「はい、お願いします」
「話はまとまっていますので、少しだけ、直接話してみることはできそうですか?」
正樹「できると思います」
このあと、電話で正樹さんの意向を伝えたあと、本人と代わりました。正樹さんは「はい、はい」と何度か返事をしており、こうして週明けからの勤務再開が決まったのでした。
正樹「会社の人が優しく説明してくれたので、安心しました」
心理カウンセラーは、クライアントの話を聞くだけでなく、関係する人たちや連携機関とも対話をし、協働体制の構築を試みるワーカー的な役割をも担っていると考えています。
特に、発達障害のような特性を持ちながら苦労して生活している(見過ごされた)人たちは少なくないと考えられますから、検査の担い手であるカウンセラーが柱となるべき時代が到来しているのではないでしょうか。
付記 本稿で取り上げる事例は、可能な限りご本人の了承を得て、かつ必要に応じて個人が特定されないよう小修正を加えて執筆したものです。