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神経系に働く最新の農薬

 農薬の毒性で頭に浮かぶのは、おそらく「中国製毒ギョーザ事件」のような中毒症状ではないだろうか。戦後普及した「化学合成農薬」は当初、DDTなどの有機塩素系だったが、毒性が強くて70年代にほぼ使用禁止になった。代わって昆虫の神経系に働いて殺す有機リン系が登場し、90年代になると、さらにその効果が増強されたネオニコチノイド系農薬(ネオニコ)が登場する。

農薬のイメージ

 この農薬はどういう毒性なのか。ネオニコの研究では世界でもトップレベルの研究者である、神戸大学大学院農学研究科の星信彦教授に聞いてみた。

「医薬品も農薬も人に摂取されることが前提ですが、医薬品は実験動物と人とで安全性試験があるのに対し、農薬は動物でしか試験ができません。なぜなら農薬は『毒』だからです。人間で試験できないのですから、口が裂けても農薬は安全だなんて言ってはいけないのです」

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 農薬は、動物に投与しても毒性が見られない「無毒性量」の数値を定め、そこから食品に残留する基準値を決めている。その無毒性量をマウスに投与すればどうなるか……。

「ちょっとした環境の変化で不安になってマウスがチッチッチと鳴いたり、異常行動をとります。特に思春期のマウスを使うとこの障害が大きく出ます。また、腸内細菌叢を変えて免疫の暴走を制御する細胞を減らしてしまうので、自己免疫性疾患やアトピーなどアレルギーにつながる可能性があります。昔の農薬と違い、飲んで死ぬようなことはないですが、障害が目に見えにくいのです」

 そんなデータがあるなら、なぜ問題にならないのだろうか。

「メーカー側の試験方法は我々とちがい、OECD試験ガイドラインという発展途上国でもできる古くて限定的な方法だから、神経毒性を調べるのは難しいのです。現行の試験に問題があれば安全基準がゆらぎます。さらにこの毒性は、感受性に左右される、つまり受ける影響には人によって差があるのです。自分は大丈夫だからといって、この農薬は安全と思ったら大間違いなのです」