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 急降下爆撃を重視した空軍は、大戦初期のフランス侵攻において華々しい成果を上げました。しかし一方で、1940年夏から始まったイギリスとの航空戦バトル・オブ・ブリテンでは、主力戦闘機の航続力不足や数の問題から苦戦を強いられることとなりました。

 イギリスでは首相ウィンストン・チャーチルが徹底抗戦の構えを見せ、空の上でも海の上でも激戦が続く。国民の熱狂とは裏腹に、戦果に翳りが見え始めたのがちょうどこの時期です。

『Wir fahren gegen England(我らイギリスへ進軍する)』のパッケージ

「我らイギリスへ進軍する」というそのまんまのゲームも

 そんな折に市場に現われたのがJoseph Scholz Mainzが発売した『Wir fahren gegen England(我らイギリスへ進軍する)』。同名の通称で知られる軍歌Das Engellandliedの歌詞からタイトルをとった海戦シミュレーションゲームでした。

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 テーマはもちろん英本土攻撃。海軍と空軍を展開し英本土包囲を目指す、よくある戦略シミュレーションの簡易版と言った趣の作品ですね。簡易版と言ってもそう侮るものではありません、主要艦隊のデータカードは時勢を反映し、なかなか本格的ですよ。

カード化された戦艦の中には実際にUボートで撃沈された船もある、航空母艦アーク・ロイヤルはゲーム発売から間もなく1941年末に沈没した

 実は本作1940年発売説と1941年発売説があるのですが、いずれにせよ発売当時はドイツによるイギリス空襲が最も激しかった頃でしょう。ですので現代的な言い方をすれば、これは戦時下の国ならではの“流行物に乗っかったゲーム”と言えるかもしれませんね。

海軍ゲームボードでふりだしになっているヴィルヘルムスハーフェンは、第一次大戦時にも英本土攻撃艦隊の結集地となった港である

 しかしながら、戦火の火の手は平時の流行より激しく移り変わる。1941年6月にソビエト連邦戦がはじまると、ナチス首脳部は英本土上陸作戦を凍結。ドイツ軍は瞬く間に東部侵攻を開始し、本作もまた、瞬く間に過ぎ去った戦いを描くゲームとなりました。