近畿6議席のうち、公明党が最大に頑張っても2議席という試算も
さらに、公明党は日本維新の会が進めてきた大阪都構想での協力を行うことで、維新との候補者擁立での調整が効いて、小選挙区では大阪府で4議席、兵庫県で2議席を確保してきました。小選挙区で9議席を確保している公明党の実に6議席が大阪・兵庫なのです。しかし、大阪都構想がひと段落して公明党との野合の必要がなくなった維新は、公明党との候補者調整をせずに候補者を擁立する動きを見せています。
近畿の最新の情勢調査では、この6議席のうち公明党が最大に頑張っても2議席という試算が出ており、そうであるならば党の存続を賭けて議席の増える東京に進出せざるを得ない事情があります。
勢いのある維新との戦いで大阪・兵庫で小選挙区を失う代わりに、東京を含む関東圏で議席を刈り取る深謀遠慮が公明党から見え隠れするのは事実です。小選挙区で候補者を立てれば、その勝ち負けとは無関係に比例代表での得票も増やせるという考えもあります。
自民党も、10増10減では山口県や和歌山県など自民党の牙城とも言える地域で議席が減少します。10減のうち、実に7議席ないし8議席は自民党が失うと考えられています。
特に山口3区においては、現外相でもある林芳正さんに自民党山口県連は公認を出す方向で最終調整をしていますが、亡くなった安倍晋三さんの後継候補の吉田真次さんが弾き出され、調整がつかず無所属出馬が取り沙汰されるほど、単に議席を失う以上の混乱が生じています。このマイナススタートを補うために、自民党としても東京での候補者を増やさなければならないというジレンマがあるのです。
丸川珠代さんは泥だらけの地上戦へ
そのような超絶デリケートでぬかるんだ沼のような情勢において、公明党が都市部で自民党に協力しないという事態の意味は決定的です。
例えば、2019年参院選東京選挙区で114万票を獲得してトップ当選を果たした丸川珠代さんが、渋谷区と港区を中心とする新7区に出馬を表明しています。旧7区で無双していた長妻昭さんは、リベラルの多い中野区を中心とした新27区への国替えをしたため、前回衆院選で東京旧2区から出て落選後さらに参院選東京選挙区でも落選した立憲の松尾明弘さん、都知事選で落選して東京旧1区に立候補して割といい感じで港区で票を取って比例復活で議員になった維新・小野泰輔さんとの一戦となります。
過去の得票実績からすると丸川珠代さん圧勝かと思いきや、すでに港区で一定の地盤を抱えた維新・小野さんが一歩リードし、長妻昭さんの遺産があり伝統的に自民党にはあまり投票しない渋谷区は激戦状態となって、データでは決して楽観視できない状態になっています。公明党の支援がなければ、丸川珠代さんは余裕の勝利どころか泥だらけの地上戦を強いられる可能性が高くなっているのです。