IRJが頼られるワケ
もっとも「その価値には盛られたところがある」と東証プライム市場に上場する企業のCFOは指摘する。このCFOが「盛られている」と言うのはIRJが強みとする株主判明調査という仕事についてだが、まずこの仕事の中身を説明しよう。
機関投資家の多くは株式を有価証券の管理や保管を担うカストディアンや信託銀行名義で保有する。こうした保有形態は株主総会で会社側と株主側が対立した場合に厄介だ。一見、誰が本当の株主なのかがわからず、双方が株主を味方に付けようにもどこに働きかけたら良いのか分からないためだ。
それを解き明かすのが株主判明調査で、日本で最も長けているのがIRJと言われる。しかしある経営者はこう指摘する。
「詳しくは話せないけれど、あるソフトを使えば99%の確率で実質株主が割り出せます。本当は自力でできるのに、ほとんどがIRJを頼っています」
鉄のトライアングルが株式市場に巣食う
コーポレート・ガバナンスの重要度は増す一方なのに備えが不十分。そういう企業が数多く存在するからこそ過大評価されたきらいのあるIRJには“盟友”とでも呼ぶべき存在がいる。人気弁護士ランキングの常連で、西村あさひ法律事務所に所属する太田洋弁護士とPRコンサルのパスファインドだ。
IRJと太田弁護士、パスファインドの「チーム」は会社と株主が対立しているケースのほとんどに関わっているといっても過言ではない。
昨年、筆者は「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月」(文藝春秋刊)を上梓した。LIXILのCEOが事実上のオーナー(当時)に解任されたものの、株主総会で自身を含む取締役候補の選任を提案、奇跡的な勝利を収めたという経済事件にスポットを当てたものだ。ここで結果として株主総会では負けたものの、思いのままにLIXILを動かそうとしたオーナー側のアドバイザーについたのもIRJ、太田弁護士、パスファインドのチームだ。