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「ホステスにビール瓶でどつかれて、血だらけに…」約50年キャバレーに通う70代男性が語った“大阪キャバレー”での夜遊び伝説

2023/07/09
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第一等の文化財を体験できる場所

 さて、繰り返しキャバレーは第一等の文化財などと書いてきたが、遠巻きに鑑賞だけするのなんてもったいない。十分書いてきたのでもういいでしょう、ここは現役店。ワンセットだけ歓楽をいたしてシメといたします。

 ああ疲れた~! ナツエさん! ハイボールお願いします!

ベテランホステスのナツエさんは、慣れた手つきでハイボールを作ってくれた

「はいよ」と彼女は慣れた手つきでサントリーレッドの大瓶からトクトクとウイスキーを流し込み、大阪能勢の名水で仕込んだノセミネラルの強炭酸を注ぐ。おっと横を見ると大先生もこれからお楽しみのようだ。奥のソファへともえさん、りつこさんを引き連れ、美しい曲線の通路を伝っていった。

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ステージで「居酒屋」をデュエットする筆者

 大ステージでデュエットする「居酒屋」、最高すぎる。

 オーナーとは「奇跡の地球」をデュエット。

オーナーの宮田泰三氏とデュエットする筆者

――帰り際、お見送りに出てくれたともえねえさんがポツリ言う。「私、まだいけるかな?」50年いけたんです、当たり前じゃないですか。藤井大先生は奥のソファでまだ歓談中。

キャバレーの大先生・藤井基義さん(写真左)は、取材後もホステスたちとの歓談を楽しんでいた

「……ほんで、ビール瓶でホステスにあたまどつかれて、まっさらなカッターシャツ血だらけになってな、ポケットビリビリ、ボタンもみんなぶわー飛ばされて。でも翌日2人で同伴して店へ行ってな……」

 笑い声に包まれ、ランプの下で静かに水滴をしたたらせている大先生の水割りグラスは、あらゆる美術品に負けない、やはり第一等の、この国の文化財そのものとして輝いていた。

 

撮影=細田忠/文藝春秋

参考文献:『昭和キャバレー秘史』(福富太郎著、文春文庫PLUS、2004年)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

「ホステスにビール瓶でどつかれて、血だらけに…」約50年キャバレーに通う70代男性が語った“大阪キャバレー”での夜遊び伝説

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