すでに日本人の賃金はアメリカの6割未満で、シンガポールの7割程度。賃金が伸びないにもかかわらず、税と社会保険料の負担ばかり増えていく、この国に未来はあるのか?
日本が今置かれている状況を、派遣社員からコンサルタントに大学教員までを経験したい異色のアナリスト・間中健介氏の新刊『キャリア弱者の成長戦略』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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日本経済は健闘してきた
高齢化、人口減少。2012年に第二次安倍政権がスタートさせた「アベノミクス」は名目3%、実質2%の経済成長を目標にしていました。2%と聞くと大したことがないようですが、2000年以降、この水準を達成した年度は4回しかありません。
それに対して世界の主要国は、年率3%以上の成長を遂げてきました。成長率の差は賃金に現れており、現在の日本人の賃金はアメリカの6割未満で、シンガポールの7割です。
団塊の世代が知るアジアは「安い労働力の地域」で、団塊ジュニアもその価値観に影響を受けていますが、いまデジタル産業に関わる若手の間では「日本がオフショアになっている」、つまり、グローバル企業の安い労働力として日本人が使われている状況にあります。
暗い話ばかりでは本を書く意味がありませんので、本章では日本経済が健闘してきた事実を押さえながら、ミドル世代を取り巻く状況を整理しましょう。
2010年代の10年間で総人口は毎年平均19万人ずつ減る一方、高齢者は毎年平均65万人ずつ増えてきました。人口減少の逆風下、2012年秋から2020年を迎えるまで、日本経済は極めて緩やかながら持続的成長を続けていました。
40兆円台だった日本企業の経常利益は2013年度に59.6兆円に伸張し、2018年度に83.9兆円に達しました。日本を訪れる外国からの観光客は2012年に836万人でしたが、2019年には3188万人に達しました。2015年に菅義偉内閣官房長官が「2020年に4000万人」の目標を掲げた際には政府内にも冷めた態度が多かったものの、感染症拡大がなければほぼ確実に目標達成していたでしょう。