近年、増える大企業からスタートアップへの転職。風通しのいい職場や、ストックオプションが得られる可能性がある一方で、そこには大きなリスクも。
大企業出身者がベンチャー・スタートアップに転職する前に知っておくべきことを、派遣社員からコンサルタントに大学教員までを経験したい異色のアナリスト・間中健介氏の新刊『キャリア弱者の成長戦略』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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増える大企業からスタートアップへの転職
大企業からスタートアップへの転職は増えています。
経済産業省のウェブサイトによると、スタートアップへの転職者の82%が、大企業でイノベーションを起こすことに限界を感じたからと回答しています。私の周りにいる30代~40代の大企業人材たちも「今のままでは時代に取り残されると思った」(銀行員30代男性)、「仕事があまりにも細分化されていて、他部署の仕事を手伝おうとしたら怒られた」(通信会社40代女性)という理由でスタートアップに転じました。
なかには「週5日23時まで働く状況では2人の子どもの未来に責任を持てない」(国家公務員30代男性)という思いがきっかけでスタートアップを興した友人もいます。
私はこうした人材の動きはとても良いことと思います。意欲的で能力が高い大企業社員がスタートアップなどベンチャー企業に移って革新的な価値を創出することが、経済社会の発展には不可欠です。待遇面でも、最近のスタートアップは大企業のミドルクラスの水準を超える年収を用意していますし、勤務時間や場所の柔軟性が高いケースも多く見られます。ストックオプションを得ることができれば、いずれ巨額の利益を手にする可能性もあります。
ただし、「中小企業やベンチャーに移れば、経営幹部としての扱いを受けられるだろう」と考えているのであれば、それは間違いです。