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局所的な人材争奪戦、賃上げ方針

 企業間の人材争奪合戦が熾烈化しています。特に20代の若手、テクノロジーを支える理工系人材、デジタルビジネスを担う人材、グローバルビジネスを担う人材などの採用ニーズは高まっています。いわゆるハイクラスな採用市場では、従来の給与水準を大きく超える金額でのオファーが見られるのです。

 しかし、大企業であっても地方支社を支える人材の獲得には苦労しています。大型免許を持っているドライバーは、物流会社と建設会社と運輸会社で取り合いになっています。日本では毎年のように大きな自然災害が発生しており、その復旧にはダンプカー、トレーラーといった特殊車両のドライバーが欠かせません。自然災害が起きてしまうと、被災地ではない地域でも物流が停滞します。

 ファーストリテイリングが2023年1月に発表した「最大4割」の賃上げ方針には驚かされましたが、春闘シーズンでは大企業を中心に、大幅な賃上げを含む働き手の待遇改善のニュースが連日のように報じられています。連合の集計によると、2023年の春闘では3.7%という高い賃上げ率となっています。

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賃上げを決めたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長 ©getty

 一方で、国全体で賃上げが浸透しているとは言い切れません。大企業とその子会社や一次下請けでは賃上げが見られるものの、二次下請け以下になると賃上げ余地は限られます。また、警察官や自衛官、現業公務員の人材不足は深刻ですが、待遇改善は不十分です。

 人材不足となるこれからの日本では、賃金は上昇トレンドに向かうはずです。もっとも、これには経済が成長し、内需が拡大することが大前提です。そうでない限りは、足元で起きている賃金上昇は一部の働き手だけに留まり、かつ一過性のものとなります。5年後も日本の労働者の賃金が上昇しているかどうかは、日本の経済力と国際的影響力によります。(続きを読む)