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 抱いていた悪印象の輪郭がはっきりとしたのは21歳の街娼・梨花(仮名)にインタビューしたなかでのことだった。幼い顔立ちで、体は肉感的。短めの金髪で、白いブラウスに黒の短パン姿には、美容系の専門学生にいそうな雰囲気がある。

 東京の路上売春の“現在地”=新宿歌舞伎町ハイジア・大久保公園外周(通称“交縁”)の状況を簡単に整理しておこう。これまで30代から60代の比較的、歴が長い古株の街娼たちが中心だったが、2022年夏ごろからは10代後半から20代前半の新顔たちが大挙して立つという問題がクローズアップされつつあった。どういう経緯かまでは窺い知れないが、職安通り側に立つ古株たちと区別されるように新顔たちは大久保病院側を好んだ。この棲み分けは不思議といまのいままで続いている(2023年6月現在)。

歌舞伎町の街娼として働く21歳女性

 2022年7月。平日の昼間――。気怠そうな顔をして大久保病院側に立っていた新顔の梨花は、約半年前にホストにハマり売り掛けをしてしまい、借金返済のためここに流れ着いた。

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 そう話した直後、梨花は苦笑しながら言った。

「まあ、よくあるパターンだよね」

 これまでの取材経験からすれば、確かによくある話である。そして僕が「またか」と顔をしかめたのも事実である。だが、先に記したヤクザとホストの色濃い関係を補強するように、梨花には借金返済のなかでヤクザに拉致られほだされの経験があったのだ。

 梨花は昼過ぎから夜9時ごろまでほぼ毎日路上に立つ街娼で、ハイジアの地下1階にあるネットカフェ『アプレシオ』暮らしをしていた。実家は都下・町田の3Kアパートで、親はふたりとも健在なうえ、子沢山でもない。

 母26歳、父27歳のときに生まれた一人っ子だ。だが梨花の父親はコンビニ店員などのアルバイトを転々とする、ロクに定職にも就かず消費者金融で借金を重ねるパチンコ三昧の男で、その生活苦から梨花は幼稚園にも保育園にも通わせてもらえなかった。ついに梨花が小2のころには生活保護を受けるまでに。生まれてこのかた、ずっと貧乏暮らしを強いられてきた。