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 沖縄では、沖縄そばの麺をケチャップで炒めた焼きそばが食べられている。 昭和47年の沖縄返還より前、アメリカ統治時代からの習慣と思われるが、発祥時期は不明。昭和20~30年代はアメリカ統治時代なので、ここでは挙げないでおく。

 また奄美大島の「油そうめん」 や沖縄の「ソーミンチャンプルー」など、そうめんを炒めた料理もここでは除外しておく。私が調べた限りでは、お好み焼きから派生したソース焼きそばとはまったくの別系統なのだ。紙幅の都合上、詳細は省くが、これについては別の機会に調査結果を紹介できればと思う。

九州地方の主なソース焼きそば、ほか(筆者撮影)

北海道はソース文化不毛の地!?

 残る北海道だが、ありていに言ってしまうと、ソース文化不毛の地である。 小樽や稚内をはじめとして、北海道は焼きそばといえば「ソース」より「あんかけ」が主流だ。

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 私が把握している範囲では、昭和29年に創業した函館市「マルキン焼そば」が、北海道で最も古いソース焼きそばの事例だ[※10]。札幌市、大通の地下にあった「やきそば屋」(2022年秋に別のビルへ移転)はソース後がけなのだが、昭和51年創業で意外と新しい[※11]。

 お好み焼き屋は、昭和42年に札幌で創業した「風月」が、北海道では最も早い出店とされている。札幌「風月」の創業者、 二神敏郎氏は《当時、北海道ではまだお好み焼が何かも知られていない時代でした》と述べている[※12]。

 あとは帯広に「焼きラーメン」と呼ばれる焼きそばがある。あんかけと区別するために「焼きそば」ではなく、「焼きラーメン」とあえて名付けたのだろう。発祥については、ブログ 「全国イイ味ハマル味』に、帯広の方から《昭和35から40年ごろに「エビス」という店がやっていた》というコメントが投稿されている。真偽は未確認だが貴重な情報なので、例外的に取り上げておきたい。なお、エビスの焼きラーメンは、いくつかの店を経由し、現在は「癒酒屋いこう」という店が味を継承している。

 ・函館市「マルキン焼そば」 昭和29年[※10]
 ・帯広市「エビス」昭和35~40年[※13]

 なぜ、北海道ではソース味の焼きそばやお好み焼きの普及が遅かったのか。それは食糧難の時期でも、北海道ではソースやコナモンの需要がなかったからだ。