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 今日は、簡単な実験をしながらそれを説明してみましょう。今からこの教室に、ささやかな“青空”を作ります」

 ママが声を立てて笑う。「できたらすごいネ、そんなこと」

 藤竹は、黒板の前に立てた縦長の段ボール箱の頭を開き、上から中に腕を突っ込んだ。何かスイッチを入れたらしく、白い光が開いた口から上方に放たれる。

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「箱に入っているのは、強力なスポットライトです。部屋を暗くしたいので、スマホを見るのはしばらく我慢してください」

 藤竹はそう言って教室の照明をすべて落とした。スポットライトの白い光だけが、黒板の際をとおって天井を照らす。

「このライトを太陽だと思ってください。太陽の光は白色光ですが、プリズムなどを通すと、赤、橙、黄、緑、青というふうに連続的に色に分かれて見えることは知っていますか」

「虹の七色でしょう?」長老がさも常識とばかりに言った。

「そうです。太陽光には様々な波長の光が含まれていて、波長によって色が違う。波長が短いのが青色で、長いのが赤。すべて混ざっていると白い光になる。とりあえずそれだけ覚えておいてください。では――」

 藤竹は首をのばし、後ろの席を見回した。

「誰か、たばこを吸う人――ああ、柳田君、たばこ持ってますよね? ちょっと前へ来て、手伝ってください」

 なんだこいつ、わざとらしい。ため息をついて席を立ち、渋々教壇まで行った。無言でたばこを箱ごと渡すと、ライターも貸せと言う。

 教室中が(いぶか)しげに見守る中、藤竹は平然とたばこを三本抜き取り、まとめて火をつける。

「おい、いいのかよ」さすがに驚いて口にした。

「大丈夫です。火災報知器には覆いをしておきましたから」

 そういう問題じゃねえと言おうとしたが、藤竹はすたすたとスポットライトに近づき、その直上にたばこの束を掲げた。光の帯の中に、煙が立ちのぼる。

「どうです? 煙が青く見えませんか?」

「ほんとだ。結構青いネ」ママが感心して声を上げた。言われてみれば、光の当たった部分が青みがかって見える。煙の薄いところは、とくにそうだ。