謎のホームページ
織原被告の言い分をそのまま陳述し、無罪を主張した主任弁護人の神垣英郎は、東大法学部卒で司法試験に合格後、裁判官になり、千葉地裁所長、東京地裁所長、と順調に上り詰め、最後は名古屋高等裁判所長官で退官している(平成19年2月死去)。また、慶應大学大学院法学研究科博士課程を修了し、法学博士の学位を持つ安富潔弁護士は、日弁連民事介入暴力対策委員会幹事でもある。弁護団には他6名の弁護士が名を連ねていた。
織原被告の兄弟たちは、重大な事件を起こした織原を勘当同然に見捨てているが、大資産家である母は、無罪を主張する我が子を庇い、6年以上の長きに亘る裁判で多額の費用を工面してきた。
インターネットのホームページでは「真実究明班」を名乗る何者かが織原被告の無罪を訴えている。そのアドレス(http://lucies-case.to.cx/)にアクセスすると、『ルーシー事件の真実』と題する裁判記録が現れる。
ホームページが孕む問題
このホームページは、一見すると裁判傍聴マニアが作ったのではと思わせるが、その内容は日本の裁判制度の崩壊を促すような問題を孕んでいた。
「2000年12月14日より、スタートした本裁判を、今日まで我々は見続けてきた。明らかにされた事実、資料などを収集及び調査を行うと共に、麻布警察署員、検察官OB、弁護士、法医学者、専門医、各専門家などから、情報収集を行った。ここで明らかにされることは、全て真実である。真実を公表するに当たり、法律家及び本事件とは無関係の検察官並びに裁判官より、以下の事実を公表することは、法律上問題は無いとの指導を受けた」
次にこのホームページでは、一連の事件を「プレイ相手事件」と題して、「織原被告が『プレイ』を行った相手は、全員素人ではなく、外人ホステスはプレイ時に全員お金を受け取っている」と、まるで被害者を売春婦呼ばわりし、「織原被告のプレイは通称『フィリピンの酒』という気味の悪い強烈な臭いのする液体を、プレイの前に小さなガラスのショットグラスに注ぎ、女性と交互に飲み交わし、織原被告は2杯飲む」と前置きして以下のように続けている。
「覆面を被り、プレイを行う」
「法廷で明らかにされたことは、織原被告は2杯飲むことによって、羞恥心が完全に吹き飛び、その後織原被告のみ大量の興奮剤を飲む。プレイ相手女性は引き続きこの強烈な味の『フィリピンの酒』を飲み続けるうちに意識が無くなってしまう。その後織原被告は、覆面を被り、プレイを行う。覆面を被ることにより、更に平常の自分ではなくなる訳である。そして醜いプレイを行うということである」(以上、原文ママ)
つまり、織原被告が行った準強姦は、金銭を伴う合意に基づいた行為であったと主張しているのだ。
その証拠に、わいせつ目的で弄んだ複数の被害者女性に対し、弁護士は平均300万円の慰謝料を仲介し、ホームページでは告訴取り下げ書とその確認書まで発表している。