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〈私は織原氏から、私の娘ルーシー・ブラックマンに対するコンドーレンスマネー(お悔やみ金)1億円を受け入れ、受け渡しは今月以下のことを確認し、東京で署名し、行うことに致します。

 1 裁判は日本の裁判所に委ねます。

 2 私は、ルーシーの家族を代表し、総額1億円を受け取ります。その配分については、家族と相談し決定します。

 東京に来る事前に、1億円の5%を以下に明記する私の口座に振り込んでいただき、東京に於いて私は、書面に署名し、残金を受け取りたいと思います。つまり、500万円を保証金として以下の私の口座に振り込んでいただき、残金の9500万円を日本で書面に署名し、受け取りたいということです。〉

 英文では銀行名と口座番号まで隠すことなく示されていた。

 父親が裁判所に提出した上申書は、

〈私は、私の娘ルーシー・ブラックマンの死因が不明であったことや、織原被告のDNA等が一切娘の体内から検出されなかったことや、娘を損壊・遺棄したとされる日時に織原被告が、旅館に宿泊していたことなどを知りませんでした。

 日本の裁判所に対し、以下のことを上申しお願い申し上げます。

 1 私の娘ルーシー・ブラックマンの遺体の口の中からあふれ出ていた真っ黒な物質及び頭部を覆っていた真っ黒な物質は、一体何であったのか。

 2 私の娘ルーシー・ブラックマンの頭部を覆っていたコンクリートの成分分析。

 3 私の娘ルーシー・ブラックマンが、何時どのように○○(※編集部伏字)から、油壺に移動させられたのか。

 以上、死因及びこの事件が判明できると思われる最も重要なこの3点について、是非調べていただくよう、ルーシー・ブラックマンの父親としてお願い申し上げます。

 死因が、判明できると思われる口の中に充満され顔全体を覆っていた真っ黒な物質が、もしも警察、検察によって捨てられたとするのなら、その行為は違法なものであり、娘を愛する父親として、その人間が警察官・検察官であっても、許すことはできません。〉

 英文では「私の娘ルーシー」とは書かれておらず、翻訳する際に父親を強調する意味で付け足したのだろう。

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 父親のティモシーは、ルーシーが幼い頃に離婚し、その後、新しい家庭を持っている。

 1億円という途方もない金額を提示され、その引き換えに、弁護士に言われるまま受領書と上申書に署名した。ゆえに犯人には極刑を求めず、逆に捜査当局を批判している。1億円に目がくらみ、最愛の娘の魂を売ったのでは、と解釈されても仕方がない。

 父親は平成18年9月28日、1億円の現金受取書面にサインしている。

母親は1億円を断固拒否

 一方、母親のジェーン・ニコラ・ブラックマンは、1億円の受領に断固反対していた。

 平成16年4月20日の公判に出廷したジェーンは、「ルーシーはすばらしい娘でした。もう娘の顔を見ることも、声を聞くことも二度とできないのです。娘を奪われ、私は今後も苦しみ続けることになるでしょう」と陳述し、さらに「子供を失う悲しみは最大だと思っていたけれど、それは間違いだと知らされました。最愛の娘の身体を冒されたことを知るのは、もっと無慈悲なものでした」と話しながら、流れる涙をそっとハンカチで押さえ、「犯人が娘にどんなことをしたのか、ずっと考えていました。どうしてあんな非人道的で邪悪なことができるのか理解できません」と、しゃくりあげた。