ドジャース・大谷翔平選手の専属通訳だった水原一平氏の前代未聞の不祥事。違法のスポーツ賭博にのめり込み、大谷選手の口座資金を不正利用しての損失額が62億円まで膨れ上がっていたのだが、驚くべきはその賭けの回数だ。21年12月から24年1月までの3年で約1万9000回、1日平均25回賭けていた計算となる。

 本人が開幕戦後のクラブハウスでチーム関係者に「告白」したように、彼は間違いなく「ギャンブル依存症」なのだろう。

 ご承知の通り、「依存症」にはさまざまな「依存対象」がある。

ADVERTISEMENT

 水原氏の犯罪行為はもちろん許されるものではないが、人は誰でも知らないうちに、なにかの依存症になってしまう、そんな性質を持っている。

 そこで今回は、「依存症」について考えるための書籍3冊を、「本の話」編集部が独自にセレクト。わかりやすい概説書、実録、小説、それぞれに「依存症」のリアルを伝えてくれるラインナップをご紹介する。

1 『あなたもきっと依存症 「快」と「不安」の病』 原田隆之(文春新書)

『あなたもきっと依存症』

 依存症について、正しい情報を知るには「ベスト」といっていい一冊。 

 著者の原田隆之さんは、臨床心理学、犯罪心理学、精神保健学を専門とする研究者。身近な事例をもとに、最新の依存症の研究と治療について紹介している。

「多くの人の依存症へのイメージは、ヘベレケになって手が震えているアルコール依存症者や、幻覚妄想状態になって意味不明のことをつぶやいたり、『ヤクをくれ!』などと叫んだりしている薬物依存症者の姿ではないだろうか」(本書より)

 しかし現代の依存症者の姿は、それよりもはるかに多様であり、ハードルも低い。喫煙、アルコール、コーヒー(カフェイン)、炭水化物(糖質)、スマホゲーム、SNS,パチンコ、買い物、セックスーークスリやお酒などの物質依存型のみならず、行動に関する依存症も含めると、おそらく日本国民のうち5000万人近くが何かの「依存症」なのではないか、と著者は説明する。ここには「仕事中毒」だって含まれるのだ、という。

なぜ、ヒトは依存症になるのか?

 本書は、「アルコール」「ニコチン」「薬物」「ギャンブル」「オンラインゲーム」「糖質」「性的」依存症について、章立てして詳しく説明を加えるだけでなく、依存症への治療・対策についても踏み込んで解説している。 

 なぜヒトは依存症になるのか。

 そこには「快」の追求、という、ヒトの種の保存戦略に関わる根本的な機能の「暴走」と、「不安」を原動力に技術などを発展させてきた現代人の宿痾、といった要素が深く関わってくる。

 詳細はぜひ、本書を手にとっていただきたい。