日本人学生の英語力を上げて「グローバル人材」を育成すること、慣れ親しんだ言語で学位を得られる環境を整えて留学生を呼び込むことを主な目的に行われるEMI(English-Medium Instruction)。
しかし、在学中に、帰国子女や留学生との能力の差を目の当たりにし、劣等感を抱くようになる日本人学生も珍しくない。英語に対してコンプレックスを抱いていると、英語を自在に操る帰国子女たちが憧れの存在なわけだ。しかし、「憧れられる」側の帰国子女にも複雑な思いが生じることはある。
ここでは『英語ヒエラルキー』(光文社新書)の一部を抜粋。帰国子女・みずきが吐露する意外な心情とは。(全2回の1回目/続きを読む)
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EMI実施学部入学前の話——アメリカ現地校に通いながら日本人学校にも
みずきはご両親共に地方出身で、みずきも9歳まで地元で生活していたが、9歳から15歳の手前まで、ご両親の仕事の関係でアメリカのミシガン州に3年、カリフォルニア州に2年滞在している。
みずき:アメリカでは現地校(その国の子どもが主に通っている学校)に通ってた。月曜から金曜まで現地校に行って、土曜日に日本人学校っていうパターン。
筆者:日本人学校ではどんなことを勉強してた?
みずき:普通に、日本の学校の子と同じことやってた。英語以外、算数、国語、理科、社会。6時間のうち国語と算数が2時間ずつで、理科と社会が1時間ずつ。
筆者:国語はどんなことをするの?
みずき:日本のあの教科書を使う、おんなじだよ。
筆者:そうなんだ。別にその、日本語の勉強とかじゃないんだ。
みずき:じゃないじゃない、全然。1年生だったら1年生の教科書。4年、5年、6年、中1、中2とやって、ずっと、だから土曜日は日本人学校に通ってた。
みずきは、いずれ日本に帰国することが確実であったため、日本人学校に通い、日本にいる子どもたちと同じ内容を勉強したそうだ。月曜日から金曜日までの全ての日に開講されている日本人学校は、当時、みずきが住んでいた地域にはなかったという。
親の海外赴任のために外国に行くことになった子どもたちは、滞在先でどのように勉強するのかは親の判断に委ねられるところが大部分だ。みずきの場合はご両親が、いずれ日本に帰るのだから、日本にいる子どもたちと同じように知識を身に付けてほしい、日本人の子どもとして育てたい、という思惑があったのではないだろうか。