多くの空き家は「賃貸用」または「個人放置住宅」
では東京都内にはどんな空き家が存在するのか、その実態をみてみよう。空き家にはその形態によって「賃貸用」「売却用」「二次的」「個人放置住宅」などに分類される。「賃貸用」はアパートなどの賃貸住宅の空き家、「売却用」とは売却するために空き家としているもの、「個人放置住宅」はこれまで「その他」と分類されていたものを個人住宅で何らかの事情で誰も住まずに放置状態にあるものとして今回調査で明確に定義されたものである。
多くの空き家はこの分類のうち「賃貸用」または「個人放置住宅」に該当する。全国900万戸の空き家のうちおよそ半分の443万戸が「賃貸用」であり先述したように385万戸が「個人放置住宅」である。
東京都内の空き家の多くは実は「賃貸用」空き家だ。その数は63万戸。20年前が46万戸であるからこの間に17万戸、37%もの増加を示している。いっぽう「個人放置住宅」も21万5千戸。20年前の14万戸からなんと54%もの増加を示している。東京都は全国の数値に隠れがちながら空き家が深刻な状況を呈し始めているといえるのだ。
空き家を製造し続ける東京
空き家が急増しているのにもかかわらず、都内の住宅新設着工戸数は2023年で12万8千戸(うち貸家7万戸)。20年前で15万7千戸であるから、18%しか減少していないことになる。東京都の空き家数が同期間で35%伸びているのにもかかわらず新設住宅着工戸数が18%しか減っていないのであれば、同期間の東京都の人口増加率15.4%をはるかに上回るペースで空き家を製造している計算になる。
また空き家といえば腐朽、破損のすすんだ状態の家を連想するが、国土交通省令和元年「空き家所有者実態調査」によれば、全国の空き家の約3割は新耐震基準導入以降建築のものであり、全国の空き家の約4割は最寄り駅から1000m(徒歩約12分)以内に立地する家である。都内でも十分に居住して通勤することが可能な空き家が多数存在することがわかる。
都内の新築マンション平均価格が1億円を超えて話題になるいっぽうで、空き家数は賃貸住戸も個人放置住宅も増加し続けているのが東京都内における住宅事情なのだ。