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「戦争は絶対にダメ。真っ先に泣くのは最も弱い人なのです」
小学校低学年の頃、校庭で「米英撃滅演練」をやりました。みんなで竹槍を手にして、「ヤーッ」と。ところがアメリカの人たちと実際に接してみたら、あれほど「鬼畜米英」と忌み嫌っていたのに、憎めませんでした。私たちと同じように、それぞれ悩みや苦労を抱えながら生きていることが少しずつわかったからです。
やがて私は、ミュージカルという初めて巡り合った音楽入りの舞台に大変な興味をもちました。本場のブロードウェイへ、勉強にも行きました。竹槍で突く訓練までした相手と楽しく話をしながら、ふと「ここは敵国だったんだ」と気付いたりもしました。
けれど、みんな同じ人間なのです。まだ戦争が始まる前、横浜の港にヒタヒタと打ち寄せる波に手を浸し「この水は海を越えて、遠いアメリカやいろんな国を通って来た水だ」と感動したのを思い出しました。
ウクライナで戦争が始まって、半年が過ぎました。戦争は絶対にダメ。私は疎開先で、下の妹を亡くしています。満足に食べ物がなかったからです。戦争は誰も幸せにしないし、真っ先に泣くのは最も弱い人なのです。