住宅街の中にぽっかり口を開けて佇む、薄暗いトンネルを目指す
坑口には「高島山トンネル」とある。トンネルの上部は住宅やお墓が建ち並ぶ密集市街地だ。かつての東横線、そうした住宅地の中をぶち抜くわけにもいかず、またなんだかんだとアップダウンの激しい横浜のこと、起伏を極力回避する目的もあって、トンネルを通したのだろう。
そのトンネルの中へも、フラワー緑道は続いてゆく。まあるくぽっかりと口を開けたトンネルの中は薄暗く、どことなく不気味な気配も漂っている。
けれども、まあ真夏の横浜のちっちゃなトンネル、それもよく整備された廃線跡の遊歩道トンネルならば、怖いことは何もない。
ちゃんと明かりがともっているし、なんだかんだと行き交う人も多い。小さな丘を抜けて横浜駅近くの市街地から反町方面を結んでくれる遊歩道トンネルは、近道として地元の人にも重宝されているようだ。
トンネルを抜けると大ターミナル横浜駅がすぐそこに
ちなみにこのトンネル、現役時代は複線用のトンネルだった。だから、遊歩道になるにあたって少し幅を縮める改修工事をしたのだとか。保安上の理由からか、通行できる時間は午後9時半までに制限されているのもポイント。
それはまあ、中に入ると薄暗いトンネル、真夜中も通れると、何が起こるかわかりませんからね……。
トンネルを抜けて旧東海道を渡ると、すぐに左手からJR線の線路がやってきて、横浜駅は目の前だ。
東横線の横浜駅は、JR線と西口の駅前広場(と駅ビル)の間にぎゅっと押し込まれていた高架駅。立派な駅ビルが建っているいまの横浜駅には東横線のホームがあった面影はない。
わずかに残っているのが、横浜駅北側の線路沿いに建つJR東日本系列の商業ビルの中だろうか。この中には、「はまレールウォーク」と名付けられたところがある。ちょうど高架が通っていたのと同じフロアの床面にレールを埋め込んで趣を増している。
その北側には、古いレールや枕木が展示されている一角もあり、知る人ぞ知る廃線跡駅ビル、といったところだろうか。
東横線の高架跡は横浜駅の中へと飲み込まれてゆく。再び姿を現すのは、いよいよ本格的に“廃線跡”になる横浜駅の先からだ。JRをオーバーパスした東横線の廃線跡は、帷子川を渡ってJR根岸線の高架と並ぶと、そのまま終点の桜木町駅を目指す。