「自分自身が試されている」と感じるボランティア

 現場では、多くのボランティアに会った。

「埼玉県から休みのたびに奥能登に来ている」という男性は、気さくな人柄で、一緒に作業をしているうちに仲良くなった。

 ボランティア活動は、ある意味一期一会だ。男性は高橋さんと握手で別れる際、「(大変な目に遭っている人を)放っておけない。諦めたくない」と涙ながらに語った。高橋さんも思わず涙ぐんだが、「こうした無名の人が頑張っているから、被災地が前に進めるのだ」と心から思った。

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被災者の依頼は「きれいに直したい」から「とりあえず住めるようにしたい」まで様々だ=高橋宏詩さん提供

 炊き出しを行っている団体のリーダーにも会った。資金がどんどん苦しくなる。活動するメンバーの精神的なフォローもしなければならない。「永遠に休まらない。苦しい」と泣いていた。

 高橋さんとて、活動の実態はシビアだ。本業を休むので、ボランティアをすればするほど生活が苦しくなる。材料費などの足しにしようと、知人らに寄付をお願いしているが、「託されたお金は1円たりとも無駄にできない」と、自らを厳しく律してきた。

 だからこそ、冒頭述べたように、ギリギリまで活動し、心身ともに疲れ果てて帰宅する。

 妻だけでなく、他のボランティアにも「あんまり根を詰めたらいけないよ。これだけの災害なんだから、仕方がない面もある」と諭された。

 どんな活動ができるか。いつまで通い続けられるか。「自分自身が試されている」と高橋さんは感じている。

毅然として立つ見附島にボランティアの高橋さんが感じたもの

「ボランティアをしたいというのは、僕のエゴだということも分かっています。やめるのは簡単です。でも、心優しい奥能登の人々の力になりたい。自分が成長するチャンスでもあるから、もう少し頑張りたい」と力を込める。

 そんな高橋さんは、初めての休みに訪れた見附島でどんなことを考えたのだろう。後に改めて連絡を取った。

「妻と結婚する前、一度だけ見に行ったことがあります。『かっこいい島だな』と思っていただけに、被災で形が変わってしまい、残念でした。あの日、次々と訪れる人がいるのを見て、小さい頃から親しんできた方、思い出がたくさんある方にとっては、これからも折に触れて訪れたくなる場所なのだなと感じました。僕はまだ『見附島ビギナー』ですが、奥能登での活動などいろんなことを振り返りながら、また見に行きたいと思っています」

 半ば崩落しながらも、毅然として立つ見附島。その姿は高橋さんの心もとらえたようだった。

崩落で痛々しい見附島 ©葉上太郎