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ヒズボラをつくりあげたのは…

入山 そこで、池上さんにお伺いしたいことがあります。私の理解では、まずパレスチナにはハマスがいて、その北のレバノンにはヒズボラがいて、それから南のイエメンにはフーシ派がいて、イスラエルと敵対するようになってきているわけですよね。こういった勢力もかなりイスラム原理主義というかイスラム色が強いという理解でよろしいでしょうか。

池上 その通りですね。たとえばパレスチナのガザ地区はハマスが統治していますよね。それに対して、ヨルダン側の西岸地区はファタハが支配しています。ファタハは、パレスチナ自治政府の主流派なんですね。かつてファタハを率いていたヤーセル・アラファトは亡くなりましたけど、このファタハはイスラエルと共存していこうという穏健派なんですよね。それに対して、ハマスはとにかく「イスラエルを追い出さなければいけない」「ハマスに従うユダヤ人は留まることを認めるけれど、それ以外の連中は全部追い出さなければいけない」という考え方で、イスラエルと真っ向からぶつかっていくことになるわけですよね。

 イスラム教にはスンニ派とシーア派がありますが、このハマスはスンニ派になります。一方、ヒズボラとフーシ派はシーア派になるんです。もともとレバノンに関しては、かつてアラファトが率いていたPLO(パレスチナ解放機構)が、レバノン南部に拠点を築いてイスラエルに対する攻撃をしていたんですよ。そこでイスラエルがPLOを壊滅させようとレバノンに侵攻して占領し、PLOを追い出すことに成功した。その結果レバノンの南部に住んでいる人たちが大勢殺されてしまって、この人たちが猛烈に反発したんですね。レバノン南部はシーア派が大勢住んでいたものですから、イスラエルに対して反発するシーア派が立ち上がったのを見たイランが、絶好のチャンスだということで、イランの革命防衛隊が入ってヒズボラをつくりあげたんです。

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入山 だからイランとヒズボラは関係が深いわけですね。

池上 ハマスはスンニ派で、イランはシーア派です。宗派が違うので、提携はするけれどもそんなに密接な関係ではない。だから、ハマスがイスラエルに奇襲攻撃をすることを通告していなかったので、イランは知らなかったんですね。ところが、ヒズボラはイランによって作られた組織ですから、イランの言う通りのことをするんですよ。ヒズボラはイスラエルに対するミサイル攻撃をしていますが、決定的なダメージを与えることはしていないんですね。つまり、イランが「この程度で抑えておけ」と言っているので、それに従っているわけです。