もともとの原因はイギリスの「三枚舌外交」
入山 私は中東を全然知らないですから、実は今回も池上さんに「何か一冊でもいいから中東の本を教えてください」ということで、宿題を出してもらいまして。千葉大学教授の酒井啓子さんの『〈中東〉の考え方』(講談社現代新書)を宿題として読んだんですが、やっぱり本当に複雑ですよね。読めば読むほど、私みたいな門外漢が簡単に「中東問題ってこうですね」って言えないところがありますね。
根源にあるのは領土問題なんだと理解しています。もともとの原因は、第一次大戦のときの、イギリスのいわゆる「三枚舌外交」ですね。「パレスチナをユダヤ人にあげるよ」と言ったり、「アラブの国を作っていいよ」と言ったり、フランスには「この土地を一緒に分けようぜ」みたいなふうに言ったおかげで領土問題になってしまったわけです。
そもそもは領土戦争だったんだけれども、宗教戦争的な意味合いが出てきていると私は理解しています。ハマスはイスラエルと敵対関係にありますが、「イスラム勢力を拡大させることが大事」だと言っていますし、イスラエルは宗教シオニズムという考え方が出てきて、「パレスチナの地を治めることが宗教的な使命なんだ。それでメシア(救世主)の復活を早めるんだ」という考え方を持っている人がだいぶ台頭しているというのが私の理解です。この理解でよろしいでしょうか。
池上 まったくその通りですね。そもそも土地争い、支配争いだったのが、いつの間にか「どっちの考え方が正しいんだ?」みたいなことになってしまっているということですね。だから解決は難しくなってますよね。