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大量の使用済みおむつや生理用品が…

 一同がまず目にしたのは、ゴミの頂を降り積もった雪のように覆っている大量の使用済みおむつだった。おむつは、どれも真ん中が茶色く変色し、一部はよじれていた。

 そして、この世のものとは思えない強烈な悪臭を放っている。

 使用済みおむつは、キッチンのシンクの上にも堆積していた。あまりに長期間放置されていたためか、汚物を吸収した中央部分の繊維がボロボロになって溶け出していた。尿なのか、便なのか、もはや判別もつかない茶色の汚物がついた綿がフワフワと露出し、中身が崩れ出しているものもあった。長期間放置されたものであることは間違いなかった。

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 キッチンには2ドアの冷蔵庫が放置されていた。ゴミに埋もれていない部分は白の塗装が剥がれ、前面が黄金色に錆びついている。

 内玄関の左手に小ぶりの下駄箱があり、その横にはダークブルーの洗濯機が置かれている。洗濯機の横のわずかな隙間の一角には、おむつより一回り小さい布が繊維の山を形成していた。これは、何百個という使用済みの生理用ナプキンであった。

 中央部が赤茶色に変色した生理用ナプキンは、パンティと接着する糊面が壁にペタペタと貼りつき、まるで自らの居場所を主張するかのように、1メートル四方のなだらかな山を築いていた。真っ白なそれは雪山の斜面と化して、洗濯機横の壁に貼りついていた。

 その近くには女性の陰部のかゆみ止め薬剤である、フェミニーナ軟膏が落ちていた。

 おーちゃんが毎日おむつをつけて生活していたのだとしたら、陰部もかぶれて痒みを伴うことがあったのかもしれない。香織は、それを思うと胸が締めつけられそうになった。

 おむつの下は、タンクトップなどの衣類や、洗濯用洗剤、ジュースのペットボトル、トイレットペーパー、はたまた、プラスチックのカラーボードなどがひしゃげて無残な姿をさらし、ゴミの中間層を築いていた。コンビニの袋に入った食べかけの弁当や、水分を含んだ段ボール、籐編みのピクニックバスケット、スーツケース、バケツ、ティファールの電気ケトルなどが、なだらかに積み上がったゴミの山頂あたりに無造作に埋もれていた。そのすぐ下には、「アテント夜1枚安心パッド」といったビニールに入ったままの未使用の大人用おむつや、ピンクや水色のパステルカラーの洗濯籠が頭を出している。洗濯籠の中に、通帳などの貴重品や普段使用していたと思われるバッグなどが放り込まれていた。

 香織がゴミをどかして上蓋を開けると、病院の勤務服が湿ったままの状態で放置されていた。寸前までおーちゃんは、ここで洗濯をして、病院に出勤していたのかもしれない。浴室のバスタブの蓋はペットボトルや使用済みおむつなどのゴミで完全に塞がっていた。スーパーのお総菜の発泡トレーが天井まで届きそうなほど積み上がっていた。