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利回りはどれくらい期待できるのか その1

 不動産投資を行う際の基本は、取得しようと考えている不動産に対する期待利回りだ。つまりその不動産を取得して、外部テナントに賃貸した場合、取得価格に対してどのくらいの賃料収益を「期待」するかである。そして年間で得られる賃料収入を取得価格で割った料率を表面利回り(グロスレート)という。

 では、現在売り出し中の住戸Aを取得して仮に賃貸に拠出した場合、どの程度の利回りが得られるのだろう。幸いなことにサイト上には、同じタワマン内で賃借人募集を行っている住戸が、びっくりするくらいたくさん掲載されている。この中から同等の条件の事例を取り出してみると、月額賃料(希望賃料)は34万5000円である。これは現在の売り出し価格(1億7700万円)だと表面利回りは2.34%である。実際には賃料をすべて懐に入れられるわけではなく、管理費や修繕積立金が差し引かれる、また固定資産税や都市計画税の負担も必要になるが、いずれにしても利回りとしては極めて低いと言わざるを得ない。

著者作成

 現在の不動産投資マーケットであれば期待利回りはグロスで4%は欲しいところだろう。これは賃料に直せば月額59万円になる。実際の募集賃料が相場だとすれば、乖離は25万円にもなる。表現を変えるならば、ソフィスティケイトされた不動産投資家であれば、このクソ高い物件にはまず手を出さないという結論になる。現行賃料を基準に期待利回りである4%を確保できる買値は1億350万円だ。それでも分譲時の価格よりも2700万円も高い。分譲時に取得した投資家であれば、十分な投資成果だといってよい。

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利回りはどれくらい期待できるのか その2

 同様に住戸Bの事例をみてみよう。同等条件の住戸での賃貸募集賃料は43万5000円だ。仮に住戸Bを坪850万円で売りに出すとすれば、価格は2億2500万円。表面利回りはわずか2.31%になる。同様に期待利回りを4%とすれば、月額賃料で75万2000円は得なければならない。だがどう考えてもこの賃料を負担してでも入居を希望する賃借人がいるエリアとは思えない。逆に現行相場で4%の期待利回りを得ようとするならば、取得価格は1億3000万円でなければならないということになる。希望売却価格となんと1億円近くの乖離がある。つまり買う側からみれば、こんな価格で買ってはいけないということになる。

 分譲価格で現在の賃料相場を計算してみると住戸Aで5.41%、住戸Bで5.09%だ。

著者作成

 十分期待利回りを上回っている、つまり「お買い得」な物件ということになる。買って正解だったといえよう。