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もう過酷でしたよ。

――昨年5月の広島G7サミットでは、各国首脳の料理を「菊乃井」がご担当されたとか。このときは、村田さんも行かれましたか?

村田 行きました、もう過酷でしたよ。大将と料理長とスタッフみんなでホテルの厨房で手毬寿司握ったり、お好み焼き焼いたりしてました。

――食事に感動されたカナダのトルドー首相と三代目が握手されているお写真も。

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村田 トルドー首相は体の大きな方なんですが、「日本料理は量が少ない」とどこかでおっしゃっていたのを当日大将がなにかで聞いたらしく、「ほな、トルドーさんの分だけ、全部の料理を倍にせえ」って。

 まじか、今からですかとなっても、もうやるしかないですよね。「量が足りへんのやったら、うちはお腹いっぱいにさせたげなあかん」という大将の気持ちは正しいし、大将は日々の営業でも、「どうやったらお客さんが喜ぶのかを常に考えや」っていつも言うんですよ。なのでみんなで「わかりましたー」って、トルドー首相の分だけすべて器を変えて、手毬寿司も6カンのところを、2段にして。

 イタリアのメローニ首相はグルテンがだめとか、バイデンさんはあれがだめこれがだめとか、一人ひとりのお召し上がりいただけないものに全部対応したんですよ、うちは。それで首相の方々が、ぜひシェフを呼んで欲しいって。

 おそらく、そういった対応力に感動されたのではないかと思います。

©志水隆/文藝春秋

料理人として一番大事なこと

――三代目のご著書には、「厨房は料亭の根幹」という言葉もありました。村田さんが考える、厨房で料理人としてやっていくために一番大事なことは何ですか?

村田 真面目さじゃないですか。技術とか知識じゃなくて、真面目さと、考え方。人間性、あと優しさじゃないですかね。

――優しさというのは?

村田 僕が言うのも僭越なんですけど、優しさとは、相手のことを考えることだと思うんですよ。

 料理はつくって終わりではなくて、誰かのためにつくっているわけじゃないですか。食べてくれる人のためにつくるわけで、お母さんなら自分の子どものために料理をつくる。その根底にあるのは、子どもに喜んでもらいたいとか、おいしく食べてもらいたいとか、健康でいてほしいとか、すべて優しさですよね。