骨粗しょう症の最大の要因は性ホルモンの減少なので、いくら薬で骨が若返ったとしても、それは薬が効いている間だけ。薬がからだから抜けた瞬間に、骨の壊し屋である「破骨細胞」の勢いは復活し、骨を形成する「骨芽細胞」の働きを凌駕して、ほんの1~2年で元の木阿弥、骨の量は減ってしまいます。
つまり、骨は短時間で劇的な若返り効果が出る反面、予防・治療は一生涯続けなければならないのです。
薬を一生飲み続けると聞くと、がっかりされるかもしれませんね。でも、投与するのは「6カ月に1回」あるいは「1年に1回」だけだったらどうでしょうか。
骨粗しょう症の治療薬にはさまざまな種類があり、患者さん一人ひとりの症状やニーズに応じたテーラーメイド治療ができるようになっています。
「こけても骨折しなくなった」82歳男性
たとえば、次のような患者さんがいました。
コウヘイさん(仮名)は現在82歳。75歳だった7年前から当院の外来に通院されています。
初診時のYAMは60%※。YAM70%未満は骨粗しょう症ですので、治療が必要になります。
※YAM(Young Adult Mean)とは「若年成人平均値」の意味で、20~44歳までの健康女性の骨密度の平均値がYAM値として用いられます。骨密度測定検査では、このYAMを指標に「現在の骨量はどの程度あるのか?」をパーセンテージで示し、骨の状態について診断を下します。(同年代の平均値との比較ではありません)骨粗しょう症と判断する目安は70%未満です。
両側の膝に、関節症による重度の疼痛があり、ご本人がもう一度痛みを感じずに歩けるようになりたいと強く希望されていたこともあって両側同時の人工膝関節手術を行いました。手術時から「骨吸収抑制剤」を開始し、7年継続、外来経過観察中です。
この7年間で数度転倒されましたが、新たな骨折はありません。また、当院では人工関節術後の患者さんには、骨密度、骨代謝マーカー、骨質マーカー(ペントシジン、ホモシステイン)などを測定し、総合的に骨粗しょう症や、骨のサビ(老化)を調べ、術後の経過をよくするための最先端の骨粗しょう症治療を行っているため、人工関節と骨との固着にも問題は発生していません。