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生涯歩き続けるためにも、早めの予防が必要
7年間の服薬治療によって、腰椎のYAMの値は60%から72%へ増加しました。
骨粗しょう症治療の一番の目的は、寝たきりなどにつながる骨折を予防することです。コウヘイさんは治療を開始した当時、両膝の痛みに加えて、YAMの値が非常に低く、いつ「いつのまにか骨折」してもおかしくない状況にありました。
これまでの7年間で複数回転倒していますが、もし治療を始めていなかったら、おそらく骨折していたことでしょう。82歳の現在も、新規の骨折をすることなく、元気に歩けていることを、ご本人もご家族も喜んでいます。
巷では、人工関節の手術後5年や10年もしたら耐用年数がきて皆、再手術しなくてはならないという都市伝説が広まっています。それは正しくありません。人工関節は、その周囲を取り囲む骨粗鬆症治療をすれば生涯にわたり再手術することなく可能性が高いことが多くの研究からわかってきました。骨のケアこそが、人工関節の運命も左右するのです。
当院では、そのような問題は発生していませんし、こうした緩みを防止するために、最先端の骨の評価による骨粗しょう症治療を同時に行っています。
骨粗しょう症は、「生涯にわたり予防と治療をしていれば、骨はいつまでも若いまま、腰が曲がることもなく、元気で長生きできる」、つまり、うまくお付き合いを続けられる病気です。私たち整形外科医を、「100年元気骨」のパートナーとして、予防と治療を前向きに取り組んでいただけたらと思っています。
斎藤 充(さいとう・みつる)
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外を牽引する。
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外を牽引する。