裁判が終わり、血なまぐさい話から気持ちをリセットした
――裁判が終わったときの感想を教えてください。
【N】裁判員といえども裁判に関しては素人ですし、期間が長くなれば気持ちの負担も大きくなります。終了後には友人とともに新幹線でディズニーランドに行きました。やり切った感よりも、現実の血なまぐさい話からまったく違う世界に行って、気持ちをリセットしたかったからです。意識していなくても、ずっと事件や被告のことを考えて過ごしていたように思います。
それから、裁判の途中で辞退された3人のうちひとりは、親族のお葬式に参列するためでした。裁判を辞退したときの気持ちはとても言葉には言い表せない、とあとでその方から聞いています。この裁判が終わるまで、家族や親族に何も起こらないことを裁判員全員が願っていたと思います。
――裁判のあと、経験談等を話す機会はありましたか。
【N】家族や友人が裁判の傍聴に来てくれていたんです。百聞は一見に如かずということで、裁判についてどんな言葉で説明するより有効でした。終了後は、まず私の周りから裁判について話すことを止められました。理由は被告の親族が身内の友人であったこと、暴力団絡みの事件であったことなどです。守秘義務で話してはいけないのでは、と言われたこともよくありました。
経験を講演で話すも「一般人が裁判員になるベきではない」
――事件の内容もあり、周囲には話し辛い雰囲気だったのでしょうか。講演をされたこともあるとうかがっています。
【N】私が講座をもっていた公民館から、裁判員に選任されるまでの話をしてほしいと依頼を受けました。実際に30人ほどの前で話をしたときに、一番多かった質問は「どうすれば裁判員を辞退できるか」というものでした。「一般人が裁判員になるベきではない」と話されるかたもいました。裁判員のイメージはとてもマイナスで、制度が本当に広く認知されているのか疑問です。裁判所はもっと積極的に正しい情報を伝えるべきではないかと思います。