警察官を騙って脅迫
胸が苦しくなる言葉ばかりだ。この年、柳本は連続して犯行に及び、4件目は同年3月30日、5件目は同年4月11日、6件目は9月14日。立て続けに事件を起こす中で、柳本は女児への脅し文句を微妙に変えている。例えば5件目の犯行では警察官を装い、こう脅している。
「警察だ」
「言うこと聞いてたら刺せへん」
「通報あったからさあ、ほんまはお母さんに言わなあかんかなあと思ってんけど。言うこと聞いてくれたら黙っといてあげようかなあと思って」
さらに6件目の事件では、女児を裸にさせた上で、スマートフォンで撮影しながらこうも言い放っている。
「誰かに言ったらもう終わりや」
「君がもし誰かに言ったら、この写真ネット上にばらまくよ? ネット上とか、印刷してその辺に貼り付けるで」
柳本は約6年間もの長期にわたり、当時8歳から12歳までの女児合計10名に対して、こうしたおぞましい脅しの言葉を並べ立て、犯行を繰り返していたのである。
もう一つ見えてくる異常さは、被害者を観察して物色するストーカーのような執着性である。
〈つきまとい〉を繰り返し、スマホにメモ
被害者のうち複数人は団地住まいだった。その団地内に繰り返し侵入するなどして、柳本はストーカー的な行動をとっている。
ある事件では、女児の〈帰宅状況や保護者の在宅状況を把握し、その容姿を秘匿撮影するなどの目的で〉、1か月余りの間に5回にわたって〈団地敷地内に侵入〉した。
別件でも女児の姿を路上などで〈撮影しながら、その住居付近において見張り〉をして、〈つきまとい等を反復〉していた。
こうした付随する罪も判決文は列挙。柳本のこうした癖について、
〈通常の社会生活を維持してきた経歴の中で、各犯行に先立つ数日ないし相当長期間を通じ、被害女児の自宅や付近を見張って人の出入りなどの行動確認をし、在宅状況などを把握してスマートフォン内のメモに残し、近くに潜んで様子を撮影するなどしていた〉
と指摘している。