犯行前に何か月もかけて、女児の生活状況を知ろうと付きまとい、隠れて撮影。そしてある日、業者などを装ってドアから押し入り、カッターなどの凶器とおぞましい脅し文句を口にして、犯行に及ぶ。こんな生活を秘かに、表向きの人生とは別に、何年も何年も続けていたのである。
裁判長は〈量刑の理由〉について、こう述べている。
〈被告人は、そのような幼い被害女児らに対し、口を塞ぐなどの暴行を加えるほか、殺すぞ、黙れなどと申し向け、あるいは母親ら家族も殺すと申し向け、文言それ自体から強度の脅迫を加えており、更にカッターナイフを示すなどの脅迫を強めていた犯行も多く、強烈な暴行・脅迫である〉
〈性的認知の歪みを自覚した〉
こうした柳本の犯行について裁判長は〈女児らの受けた恐怖や精神的苦痛は想像を絶するものがある〉とし、〈刑事責任はまことに重い〉とした。
なお柳本は裁判で〈自分も年若いときに年長の女性から性的加害を受けた経験がある〉等と述べ減刑を求めたが、判決はこれについても、一蹴した。前述のように「見張り」を繰り返して下準備をした上で、
〈被害女児に口止めをしたり、通りかかった男性に捕えられそうになって逃走したり、犯行後に現場近くに潜んで警察の捜査を探るなどした一連の言動によれば、判断や統制の能力不足はうかがわれない。むしろ、各犯行は、著しく高度の計画性を備えており、(中略)女児の嫌がる様子をよく認識していても凌辱しようとする強固な犯意が認められる。これらの事情からすれば、非難が減じられることはなく、かえって強まるというほかない〉
そして、判決文はこのように締め括られる。
〈被告人が、基本的な事実関係を認めて争わず、一応の反省の弁を述べたことや、性的認知の歪みを自覚したとして治療を受ける意思を表明し、(中略)今後も被害弁償を続ける旨述べたこと、前科がないことなどの諸事情も、よく踏まえて検討したが、被告人に対しては、無期懲役刑をもって臨まざるを得ないと判断した〉――。
ちなみに柳本は最終意見陳述で、被害女児に対してこのように謝罪している。
「もし性犯罪に死刑があれば私は死刑にされて当然です。精神的苦痛を与えてしまい、申し訳ございませんでした」
どんな量刑であっても、償いきれない罪だ。
