家宅捜索で洋酒1500本を発見?
読売のサイド記事は最近の動きについても書いている。
“写真のない女”。レインボーの女社長、坂内ミノブは「社員ですらなかなか会えない社長」であり、近親者の手元にも写真がない写真嫌いの女だった。戦後13年間、彼女に接してきた人たちも、過去や正しい名前すら知らない人が多い。吉田、坂内、藤村と、それぞれの時期に接した人に名字だけ記憶されている。
“伊皿子御殿”では長い髪に黒い着物、長い袖の真っ白な羽織という神がかった服装で、気取った低い声しか出さないという。3人の子どもに1台ずつの自家用車と白の綸子*の着物。周りから見るとぜいたくすぎる育て方だが、本人は「子どもには自分が得られなかったものを与える」と言う。結論として、ある知人の言葉がある。「彼女はフレッシュとシャープという言葉が大好きでした」。それが彼女の実体でもあろう。
*絹織物の一種
本当にそれが「実体」なのだろうか。同じ日付の朝日新聞(以下、朝日)は横顔をまとめたサイド記事で彼女を“借金の天才”と呼んだ。4月2日付読売朝刊にはベタ(1段見出し)で、東京都世田谷区のミノブの別宅の家宅捜索で、地下室からウイスキー、ジン、ブランデーなどの洋酒1500本を発見したが、東京税関の調べで密輸品だと分かった、との記事が載っている。
4月8日には「レインボー」の相談役も逮捕され、捜査が進んでいるように見えたとき、国会で事件に関連した“爆弾”が炸裂した。
「政治献金のうわさ」爆弾発言
「横銭議員が爆弾発言」。4月10日付毎日新聞(以下、毎日)夕刊は社会面トップにこんな見出しを立てた。同じ日付の朝日は1面に「“政治献金のうわさ” 千葉銀行問題を追及 横銭氏(社)」の見出しで次のように報じた。
東京・銀座のレストラン「レインボー」の千葉銀行に対する詐欺事件について、衆院大蔵委員会は10日午前10時半から一万田蔵相らの出席を求めたほか、篠原日銀調査局長を参考人として呼び、千葉銀行の融資について、政府側の監督状況などを追及した。この問題について銀行側はたびたび欠席戦術に出たため、社会党側委員を刺激。ようやく初の委員会が開かれたといういわくつきの展開。
この日、社会党の春日一幸(のち民社党委員長)、横銭重吉両委員は「千葉銀行の貸付は非常にルーズだ。これに対して政府はどんな処置をしたか」と追及。一万田蔵相は「千葉銀行問題はいま微妙な状態にあるので、検査などの内容は発表できない」と焦点をそらした。
「一万田蔵相」とは、一万田尚登蔵相(当時)のこと。日銀総裁を長く務めて「法王」と呼ばれ、蔵相は2回目だった。横銭議員は千葉県・野田醤油の労働組合で委員長などを歴任。県議を経て1955年、旧千葉1区で初当選した。
“爆弾質問”は質疑の途中、横銭議員から出た。朝日の記事は続く。