「古荘頭取から1000万円の政治献金」

横銭議員 蔵相は昨年12月か今年1月に、某代議士に多額の融資を頼まれて 古荘氏に対し、特にこれを頼むという意味の親書を渡している。内容は一体どんなものか。
 

一万田蔵相 ある代議士に(金を)融通しろという意味の手紙を出したことはない。内容もはっきりしたことは覚えていない。金銭の融通については全く触れていない(親書を出したことは暗に認めている)。

 

横銭議員 では、なぜそれを取り返したのか。
 

一万田蔵相 取り返したのではない。後で誤解を招くと考えたからだ。

 

横銭議員 親書を出す前の昨年12月ごろ、柳橋の中洲(正しくは中央区日本橋中洲)の某料亭であなたと唐沢(俊樹)法相、川島(正次郎・自民党)幹事長、岸(信介)総理(首相)ともう1人の代議士とが会談。その結果、検察庁に対しては唐沢法相が責任を持つ、行政上の問題についてはあなたが責任を持つ。そういう話し合いをされて、その結果、親書を出しているのではないか。

 

一万田蔵相 それは全くウソです。違います。

 

横銭議員 私も政治生命を懸けている。あなたにとっても重要な問題。誰にも会っていない、ウソ偽りというのは見逃せない。あなたが当日(古荘頭取と)会ったというのは、その裏に川島幹事長に対して古荘頭取から1000万円の政治献金が行われたということ(情報)はもう流れている。

 

一万田蔵相 全くそれはありません。

 

横銭議員 それなら、見たという人を証人に呼んで対決させる。でたらめを言っているのではない。その人は森脇将光氏だ。

 #1でも触れた「森脇文庫」社長で全国長者番付1位になったこともある森脇将光。彼が調査した結果をまとめた「森脇メモ」はいくつもの事件で登場したが、ここでもまた出てきたというところか。

横銭議員の「爆弾発言」を伝える毎日

 ただ、朝日には森脇の談話も載っており、「私の調査と横銭氏の発言は大体似ているが、会談に一万田氏が出たことは知らない。当方で確認しているのは正力(松太郎)国務相、唐沢法相、山村(新治郎)代議士、古荘頭取の4人だ」とした。

 当時は第一次岸改造内閣。唐沢法相は戦前の内務官僚で衆院1期目だった。正力国務相も戦前の内務官僚出身で読売新聞社主。川島は党人派で“寝業師”と呼ばれ、横銭と同じ旧千葉1区選出だった。山村はのち行官庁長官で旧千葉2区選出。横銭と合わせた3人がいずれも千葉選出というところがポイントだろう。

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朝日では古荘、森脇の“紙上対決”も

 翌4月11日付朝日朝刊は「横銭発言で両党会談」の見出しでその後の動きを報じた。主要部分はこうだ。

「『横銭発言』は自民党を強く刺激し、結局、同夜(4月10日夜)院内で開かれた自民、社会両党の幹事長・書記長、国会対策委員長会談で事態の収拾が図られた。自民党側は千葉銀行事件の取り扱いを慎重にするよう求めたが、社会党側は同事件の真相究明を強調。事態の円満解決を望んでいた自民党の意図は達せられなかった」

 記事によれば、「横銭発言」の(1)某代議士への融資についての料亭での会談、(2)古荘頭取から川島幹事長への1000万円の政治資金提供――について、自民党は全く事実無根と主張。社会党は引き続き衆議院大蔵委での事実究明を求めた。

 同じ紙面には岸信介首相(当時)の「千葉銀行の古荘君から金をもらったことはもちろんないし、メシを食ったこともない。横銭君が、私が関係あるとかなんとか言っているとすれば、当然懲罰問題だ」という談話と、同様に全面否定した唐沢法相の話が載っている。