継母が怒り出したら身体が反応してしまう
ハンバーグを作っておいてと、言われた時のことでした。きっと、私の作ったハンバーグが気に入らなかったのでしょう。継母はキーッとなって、タネの入ったボールを壁に投げつけ、まな板や食器をメチャクチャに床に叩きつけました。そうなると声のトーンまで変わって、ドスの利いた声で怒鳴りまくるのです。継母が怒り出したら、私の髪の毛は逆立ち、鳥肌が立ち、血が熱くなるのがわかります。恐怖のあまり、身体が反応してしまうのです。そして、ああ、また始まったって思うのです。
「殴りたいのを我慢してるんだから、ありがたく思いなさいよ!」
これも、常套句でした。私こそ、本当に、その顔に水をバシャーッとかけるとか、何かアクションをしたかった。そうすればよかった。なんでしなかったんだと、心から思います。
一緒に映画を観るとなっても、その時の私はロボットのようになっていました。自分で、スイッチを入れるんです。「これから、ママハハと映画に行きます」とプログラミングして、「終わるまでの時間を、耐えます」って。これ、もはや、立派な介護ではないですか?
ある時、継母が自分の子どもを持てば、環境が変わるのではないかと思いました。自分の子どもをかわいがれば、ついでに私もかわいがってくれるのではと、思いきって頼んでみました。
「お母さん、私、弟か妹が欲しい」
継母の答えは、あっけないものでした。
「あんたがいじめるから、産まない」
「私、絶対にいじめないよ。すごくかわいがるから」
「いや、あんたは絶対にいじめる」
この時の継母の冷たさも、心を凍らせるには十分でした。
何かを選べと継母に言われても、どっちを選んでも、結局は私が間違っていることにされるので嫌になってしまい、「どっちなの?」と聞かれても、「うん」としか、私は言わなくなっていました。どっちでもいいや、と思ったから。それもまた継母は気に入らなくて、キーッととてつもない咆哮が始まり、その声を聞いて、父親が「おまえ、なんか、文句あんのかー!」って、乱入してくるわけです。