兄が性器を触ってきたことを話しても…
これは、まだ兄が家にいた頃の話です。私は兄が大好きで、兄の横で寝ていましたが、兄が性器を触ってくることがありました。「やめて」と言いましたが、またやってきます。継母に話すと、最初は「寝ぼけていたんじゃないか」と聞き流され、二度目には「そんなの、どこの家にもあること」と何もしてもらえませんでした。寝たら負けだと思って毎晩、布団に入りました。クッションを2つ、身体の上に乗せてズボンのヒモをきつくしばり、その上からベルトを巻き……。中学1年の冬休み、同じ校区内で引っ越して、それぞれの部屋ができてからはなくなりました。それっきりなのですが、最近、ふと思います。兄には、謝ってもらった方がいいのだろうかと。
中学の時は「いい高校に入れ」と口が酸っぱくなるほど言われ、父親と継母から塾に行かされて、意味もわからず通っていましたが、高校生になると塾通いはなくなり、その代わりに毎日、継母のカメラ屋の手伝いをしなければなりませんでした。
継母と一緒にいることがものすごく苦痛で、嫌でたまらなく、駅のホームで一人、泣いていたこともありました。自転車で店に行くのですが、自転車を止めた瞬間、気持ちをパッと切り変えるんです。スイッチを変えるように。そうやって「ただいまー」と言って店に入るんですけど、その「ただいま」の言い方一つで、継母はイチャモンを付けてくるのです。お店では、私への文句ばかり。私にクレームをつけるのを、楽しんでいるようでした。
お客さんなど他人の前で、私をバカにするのも常でした。外では、家の中と違って怒鳴ることはありませんが、じめーっとした嫌なことを言うのです。お客さんが継母に、「それ以上、言わないであげて」と、私を庇ってくれたことがあったほど。その方は継母が席を外した隙に、「いつも、けちょんけちょんに言われてるねー」と、肩をさすって慰めてくれました。
私が高校生の頃には、父親と継母の仲は相当、険悪なものになり、激しい喧嘩が絶えなくなりました。以前はDVサイクルがあり、「ハネムーン期」になると父親が赤ちゃん言葉で継母に甘えたりして、それも気持ちが悪いものでしたが、2人からは「ハネムーン期」なんてなかったかのように消え失せました。
だから、カメラ屋を手伝っていた時、継母にふと、日頃感じていた疑問を聞いてみたのです。
「なんで、結婚したの?」
「強引に。あまりに熱烈で怖くなったから」