――今回、ジョージ・マッケイが演じたルイ役は当初ギャスパー・ウリエル(注:2022年に事故で急逝)が予定されていたそうですが、彼の急死をうけて、映画の内容も大きく変わっていったのでしょうか?
ベルトラン・ボネロ 変化があったとしたら、新たに英語圏の俳優を起用しようと決めたことでしょうか。1910年のパートはもともとすべてフランス語の予定として脚本を書いていましたが、ジョージ・マッケイを起用したことで、ルイの役柄は英語とフランス語のバイリンガルという設定になりました。それ以外の物語部分はほぼ変わっていないはずです。
――ジョージ・マッケイ演じるルイもユニークで素晴らしいキャラクターでしたが、映画を見ながら、ギャスパー・ウリエルの存在を画面のどこかに感じてしまいました。
ベルトラン・ボネロ たしかにこの映画をつくりながら、私たちはいつもギャスパーの存在を亡霊のように感じていました。もちろんとてもポジティヴな意味で。私たちに良いものをもたらす存在として、彼の気配をつねに身近に感じていたんです。
デヴィッド・リンチは、もっと自由に、より大胆になれと教えてくれた映画作家でした
――現実と幻想が混ざり合うスタイルや、悪夢のようにシュールで美しい映像は、どこかデヴィッド・リンチ監督の映画世界に通じるものを感じたのですが、意識はされていましたか?
ベルトラン・ボネロ 意識していたわけではありませんが、これまでずっとデヴィッド・リンチの映画を見続けてきましたから、自ずとその影響が浮かび上がってきたのかもしれません。リンチは、物語の語り口であれスタイルであれ、もっと自由に、より大胆になれと教えてくれた映画作家でした。
――最後に、ヴェネチア国際映画祭での上映時にも話題を呼んだというエンドクレジットについても教えてください。クレジットが始まった途端に現れるQRコードに誰もが衝撃を受けると思います。あれはまさに「もっと自由に、より大胆に」という教えに沿ったものなのでしょうか?
ベルトラン・ボネロ エンドクレジットのQRコードは私がとてもこだわったアイディアです。最初はなかなか許可がおりなかったのですが、なんとか実現にこぎつけられて本当によかった。私にとってはエンドクレジットも含めてひとつの作品ですし、映画の内容にもぴったりではないでしょうか。映画が描く近未来の世界では、我々人間はもはや非人間化された存在となっている。それを的確に表現した終わり方になったかと思います。
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映画『けものがいる』
4/25(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
https://kemonogairu.com/




