他にも、春夏のフェイスマスクやネッククーラーから、秋冬素材のマフラーやハラマキまで、1年を通して現在100種類超・10万枚のオリジナル商品を企画、自社・協力工場を含め約25人の手によって製品が生み出されている。

台湾留学の経験が思わぬ形でつながる

エトワールに卸している商品約1万枚(年間)のうち、6割近くが海外、中でも台湾の卸業者や小売店が多く仕入れていることがわかった。実際、筆者が3月、台北市内にある取扱店舗の店員に評判を聞いてみると、「ここの商品は質がいい。よく売れるので、代理店が持ち込む分はあるだけ全部仕入れるようにしている」という。

4代目社長の新一朗さんは、東かがわ市内の高校を卒業後、1993年から2年間、台湾に語学留学した経験がある。やりたいことが特にない。進学も就職も、家業を手伝うことすら考えられずにいた。「苦労知らず」「考えが甘い」「厳しいところで経験が必要」と、家族や先生らに勧められ、「台湾なら行ってみてもいいかな」というほどの気持ちで選んだ留学だった。なんのつてもないところから住まいを探し、さまざまなバイトを経験して「自活」を学んだ。

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「30年前にお世話になった台湾の人に、まさか自分のところの商品を買ってもらえるようになるなんてね。嬉しいのと、なんだかすごいことだなって」

請負型製造から脱却し、黒字経営へ転換

長く、請負型のニット製造を事業の柱にしてきた寺一は、2016年から自社製のマフラーを開発したことをきっかけに、開発前との比較で最終利益が40%増、黒字経営に転換させた。それまでおよそ20年にわたって「会社に利益が残らない状態」で過ごしてきたという。

商品を企画する企業から委託を受けて製品を編み立て、納品する。時代ごとにたびたび流行品の製造元となってきたが、設備投資のための借金と返済を繰り返して自転車操業を続けた。気づけば、「近所に数十軒はあった」という同業者のほとんどが、姿を消していた。