――蓮實先生の「映画に何が映っていたかを分析する見方」というのは、映画を撮った人じゃないとできない発想だと思ったと、黒沢さんが言っていました。確かに監督のねらいを読み解いていくような部分があると思うんですが、蓮實さんは映画を撮ろうとは思われなかったんですか?

蓮實 8ミリは、素人としてちょっと回したことがあります。

――そうなんですか。

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蓮實 8ミリキャメラを持ってイタリアに行き、ヴェネチアの裏町の民家を撮るとか、そんなことをしていました。小さな四角いカメラで、もう撮るだけという。

――記録として撮っていた。

蓮實 そうです。

――劇映画みたいなものを撮ろうとは思わなかったんですか?

蓮實 いや、まったく撮る気はありませんでした。

――そうですか。観客として映画を見ながら、何を見せようとしているかを読み解いていったということですか。

蓮實 はい、そういうことになります。

注釈
1)『白い肌に狂う牙』1977 8ミリ 33分 監督:黒沢清 出演:片山善智 小松弘 
2)SPP Saint Paul’s Production 立教大学の映画製作サークル。

<聞き手>こなか・かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画製作を経て、86年『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。97年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。主な監督作品に、『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ULTRAMAN』(2004)、『東京少女』(2008)、『VAMP』 (2019)、『Single8』(2023)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023)など。

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