「お互いの一門の羨ましいところは?」

――自分の一門で苦労しているところ、お互いに深浦一門、杉本一門を見てうらやましいと思うところを教えてください。

深浦 自分の弟子は全国に分散しているので、一門としてまとめにくいところはあります。ネット将棋を活用しているものの、限界はある。

 その点、杉本さんのように師匠の研究室があって、みんなが集まりやすいのは、やっぱり優れたシステムです。定期的に直に顔を見られるのも安心です。

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 東海研修会から弟子入りしやすいですし、子ども心に日本一の師匠のところに入りたいと思うんじゃないでしょうか。

 

杉本 正確にいうと“日本一の棋士の師匠”ですけどね。

深浦 いやいや(笑)。

 

杉本 私の弟子は、アマチュア時代からすでに面識がある子がほとんどです。一時期は増えすぎて、15人ぐらいいたかな。集まると学校の教室みたいで(笑)、新たに弟子を取らなかった時期もあります。

 身近に面倒を見られるといっても、全員の立場や目指している将棋は違うので、どう教えるかは難しい。私の弟子には研修会員、奨励会員、女流棋士がいますけど、同じ空間に集めてやるのが本当にいいのかが微妙です。

 例えば、奨励会の持ち時間は1時間か1時間半です。女流棋戦は2時間や3時間が主流、棋士は5時間や6時間の棋戦もあります。持ち時間が違うと戦い方も変わるので、いくら自分や上位者を参考にしてもらいたいと思っても、役に立たないかもしれない。

 指し手が難しい将棋でも、長時間の棋戦ならしっかり考えられるので逃げきれるけど、持ち時間が短いとそれはできないでしょうから。

――最善じゃなくても勢いがあって、相手がミスをしやすいような実戦的な指し回しのほうが、奨励会だと結果を出しやすいかもしれません。

杉本 そうですけど、私の将棋は実戦的とはいいがたいので、そういうアドバイスができない。