「弟子の連勝は、夢でも見てるような感じでした」

――齊藤優希四段のプロ入りは28歳です。年齢制限である26歳を超えても、勝ち越し規定(三段リーグを勝ち越せば、満29歳まで在籍可能)を満たして戦っていました。それを見守っているときの気持ちはどうでしたか。

深浦 26歳(2022年)が1つの境目だと感じていました。それまでは昇級候補の1番手といわれ、2020年に新人王戦(若手棋戦)で準優勝しましたし、チャンスがあるだろうと期待していました。

 正直にいえば、26歳を過ぎて観念しましたね。でも、そこから今までに見たことないような底力を見せられました。師匠として苦しい時間が長かったので、今日のように一緒に仕事をするイメージは持てなかったです。最後の三段リーグで連勝を積み重ねているときは、本当に夢でも見てるような感じでしたね。

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――2023年の27歳で迎えた第74回三段リーグで、齊藤優希三段は1勝6敗スタートと大ピンチでした。残り11戦のうち9勝しなければ退会です。この期は、深浦九段も心配して声をかけたそうですね。

深浦 2日目を終えて、1勝3敗スタートになったあとですかね。当時も離れたところで見守っていましたが、これはさすがにまずいと思ったんですよ。

 湯島(東京都文京区)で会う用事があったので、一緒に学問の神様・湯島天神でお参りし、お守りを買って、知人と一緒に食事をしながら屈託のない話をしたぐらいです。

 そのときの齊藤優希くんは、表情を見ても将棋に100パーセント向いていない感じでした。普段の生活とかを聞いても、実際にそうだったみたいですし。やっぱり、話せてよかったですね。

 

――齊藤優希三段は緊張して湯島にいったのでしょうね。

深浦 そうかもしれません。もちろん、いつかは師匠として決断しないといけないときはありますが、そういうつもりは全くなかった。よい気分転換になればとしか考えていなくて、気づいたら体が動いていました。

杉本 何が正しいかはわからないんですけど、できることだったらなんでもしてあげたいなという思いはありますよね。

撮影=杉山秀樹

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