「勝ちが見えてもプレッシャー」「きちんと詰まさないと負かされる」
深浦 杉本さんと会うと、藤井さんと初めて公式戦を指したことを思い出します(2017年の叡王戦)。自分がクソ粘りしているうちに難しくなって逆転勝ちしましたが、直後に杉本さんからメールが届いたんですよね。
なんか文句いわれるのかなと思いきや「しっかり厳しく指していただきました。ありがとうございました」という内容でした。いやぁ、この師匠はちょっと違うなと思いましたよ。
杉本 たまに藤井くんの対局後に「おめでとう」「お疲れさま」を送っていますからね。そのときは藤井くんに送る気満々だったのに、結果を見て深浦さんに送るかと思ったのかもしれない。
――あのときの藤井四段は、逆転されたあとに正座のまま太ももを叩いて、悔しさを露わにしていましたね。
杉本 奨励会のときも太ももを叩いていたらしいんですよねぇ。「何をやっているんだ」と怒りを自分にぶつけていたのでしょう。深浦戦も、まだ投了していないのに頭をがくんとさせて、ぐったりしていましたよね。深浦さん、あれは逆にプレッシャーがかかりませんか。
深浦 そうですね。最後の最後にこちらの勝ちが見えましたけど、最後はきちんと詰まさないと負かされちゃいますから。
杉本 ですよね。もうどうやっても負けの局面だったら藤井くんの気持ちもわかるんですよ。でも、こちらの勝ちが1個しかない局面でぐったりされると、それはプレッシャーです。
――間違えたら負けですからね。しかも、自分がわかっていなくて必死に考えているところで、相手は負けを悟っている。つまり、それは相手が先に読み切ったことになりますし。
杉本 こっちに勝ちがあるのはわかっている、相手の様子を見てもわかっている、でも間違えたらどうしようと焦ってしまうんですよ。練習将棋で藤井くんにがっかりされても、私のミスで逆転負けは何度もありました。そういうとき、ちょっと申し訳なさそうな様子になるんですよねぇ。




