「本人は気づいていなかったようですが…」九州に現地入りしての観戦

――静岡県沼津市の棋聖戦第3局に加えて、地元の九州で行われた王位戦第4局(佐賀県嬉野市)も現地まで観戦にいったそうですね。

深浦 戦いぶりを近くで見たかったですから。九州では感想戦も遠くから拝見しました。佐々木本人は気づいていなかったようですが、声をかけるつもりはなかったです。

 戦っている最中ですし、勝っても1勝3敗であとがない状況に変わりはなかったので。佐々木の戦いぶりは、地元の主催者である西日本新聞さんにもすごく大きく取り上げていただき、感慨深いものがありましたね。

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――シリーズは王位戦が藤井さんの4勝1敗、棋聖戦は3勝1敗で防衛となりました。棋聖戦の開幕局はベトナム・ダナンの海外対局が話題になりましたね。

深浦 そういえば『師匠はつらいよ』の第2巻を読んでいて気になったんですが、ダナンに誘ったら杉本さんはいきましたか?

「杉本師匠は一緒にベトナムに行かないのですか?」

 何人かの人にこう聞かれた。弟子がタイトル戦に慣れてない頃ならいざ知らず、今は行く必要はないなあ。

 だから今回も予定なし……いや待てよ。初挑戦の弟子の師匠(深浦九段)が同行するのは自然だし、その場合はバランスを取らないといけないのではないか?

 リゾート、豊かな自然と眩しい太陽、地元料理とスイーツ……。

「深浦さん、一緒にベトナムに応援に行かない?」

 何となしにLINEで作成した文章。送信することは多分ないであろう。

杉本 行きたかったですよ。

深浦 メールをくれればよかったのに(笑)。

杉本 でも、対戦相手の師匠に「行きませんか」というのはやっぱり変ですよ(笑)。間を取り持ってくれる人がいたら、実現したかもしれない。

王座戦第1局は杉本昌隆八段の思い出の地

――今度の9月頭に行われる王座戦五番勝負では、第1局がシンガポール・セントーサ島で行われます。藤井聡太王座に伊藤匠叡王が挑戦するシリーズで、記録係は齊藤優希四段です。

杉本 伊藤さんの師匠は宮田利男八段ですかぁ。私の師匠と顔が似ていますし、よくご飯をご馳走になったので親近感を持っています。でも、実際は誘えません(笑)。

 実は私の初めての海外旅行先はシンガポールですよ。20代のころで、たまたまキャビンアテンダントが中学の同級生だったとか、思い出があります。マーライオンは意外と小さかったですね。マンゴープリンが美味しかったな。

 

――シンガポールの料理、藤井さんの口に合いますか。エスニック料理はハーブやスパイスがふんだんに使われているから、苦手な人は苦手です。

杉本 どうなんだろう。でも、結局は嫌いなキノコでしょう。彼は全ての基準がキノコだから(笑)。

撮影=杉山秀樹

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次の記事に続く 「藤井聡太も弟子を取る?」杉本昌隆八段と深浦康市九段、2人の師匠棋士が語る“これから弟子に伝えたいこと”《「師匠はつらいよ」刊行記念》

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