「本当に頻発していまして、 捜査が追いつかない状態。 捜査をしていると、またやられるというようなそんな状態でした。時効の迫った事件から、優先でやらなきゃいけないし、新しい事件に着手できない。正直に言うと事件は溜まっていた状態です」
その中で、大手ハウスメーカーが巨額の被害を受ける事件が起きた。当時は驚きもあったという。
「それこそ、 本当なの? というのが正直な思いでした。額も桁違いだったので、どうやって騙されたのかと、最初は感じましたし、この捜査は大変だとも思いました」
その後、捜査2課としては異例の約50名の捜査体制を敷き、この事件に立ち向かうことになっていく。それは、事件に関わる多数の人物の中に、他の事件への関与が疑われた地面師が複数いたからだと振り返った。
「口座の手配や回収役、あとは、それをすべて取りまとめる総合プロデューサーのようなものもいましたし、地面師グループが2つ3つ関与していました。その中で、かなり大物が出てきた。大物がそろって事件をやることはないので、大変ですけど、この事件の捜査を徹底的にやれば、一網打尽にできる。そうすると、これまで溜まっていた事件の中で、彼らの余罪も出てくると、そういう気持ちでした」
捜査は2年近くかかった。その結果、内田マイクや土井淑雄、カミンスカス操など、大物とみられていた地面師を含む17人を逮捕した。
「証拠を集め、関係者からも聞いて、こいつは絶対知っていた、偽物だと知って、突き進んだんだと。 同じグループで、だます意思を持っていたという、その捜査が一番肝で、大変なところでした。刑事として、本当に分岐点というか、これほどの大きな事件というのは、やったことないですし、それだけ部下とともに相当な苦労をした」
「今後も地面師事件は起き続ける」
今回の事件のあと、いったんは沈静化した地面師詐欺事件。しかし、今年6月、万博の開催などで地価が上昇する大阪で、地面師事件の逮捕者が出た。坂井明徳・警視正に、地面師詐欺事件をなくすことはできないのか、問うた。
「事件は続いていくと思います。地面師の大物たちも、どんどん出所してくるでしょうし、不動産は売り手市場ということもあります。一獲千金を狙った買い手がだまされるということは、今後も予想されます。警察としても、行政、特に法務局と連携して、空き家や管理の届かない土地への対策をしていかないと、また同じ犯罪が起こるなと思っています。社会悪はなくしたいですね。 正直者がバカを見ない、世界にしたい」
事件を受け、積水ハウスは複数の再発防止策を実行している。リスクを十分議論する場がなかったとして、新たな経営会議を設置する、トップダウンの企業風土を改善するための人事ローテーションを導入する、などとしている。




