海外では、犯罪機会論の視点から、「不特定多数の人が集まる場所」のように「心理的に見えにくい場所」であっても、できるだけ「物理的に見えやすい場所」にしようと工夫してきた。

例えば、現代のショッピングモールは、昔の監獄のデザインを受け継がれている。次の写真は、カナダのショッピングモールだが、このデザインを監獄のデザインと比べていただきたい。

監獄のデザインとして紹介するのは、オーストラリアの旧メルボルン監獄だ。ここは現在、歴史的建造物として一般公開されている。

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行政や企業が担うべき課題

この建築様式は、イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムが考案したもので、「パノプティコン」と呼ばれている。それは、古代ギリシャ語の「パン(すべて)」と「オプティコン(観察)」の合成語だ。囚人は実際には見られていなくても、看守の視線を気にせざるを得ないので、「一望監視施設」とも呼ばれている。

ショッピングモールのデザインも、同じように犯罪機会論の発想から、「どこからか誰かから見られている状況」を作り出している。

こうした取り組みは、本来は行政や企業が担うべき課題だが、彼らが犯罪機会論の重要性に気づくまで、犯罪は待ってはくれない。それまでは、日本人の一人ひとりが、犯罪機会論を学び、「入りやすく見えにくい場所」に注意するしかない。

例えば、ショッピングモールのトイレを利用する際、次のような特徴が見られるのなら警戒レベルを上げていただきたい。

「危ないトイレ」の特徴

【「入りやすい」トイレの特徴】

(1)男女・だれでもトイレの「入り口」と「動線」が同じor隣り合っている

男性が女性用トイレ付近にいても不自然に見えにくく、犯人がターゲットに接近しやすい。当記事の冒頭に紹介した熊本の事件のように、男性ルート上にある「だれでもトイレ」があてはまる。

(2)男性用が、女性用とだれでもトイレよりも奥にある

女性用トイレに向かう動線上に男性が入ってくることになり、尾行や待ち伏せのリスクが高まる。