「師匠には連絡しました。今日が誕生日みたいで…」

——全体を振り返って。

「良く指せた将棋もありましたし、うまく行かなかった将棋もありましたが、尻上がりに状態を上げることができたなと」

 耳が赤くなっていなかったけどリラックスして戦えたのですね?と聞くと、伊藤は「ははは」と笑って、「余裕はなかったです。秒読みに入ったあたりは最後まで全然分かってなくて、勝ちだとは思っていましたけど」

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 設定が21度の冷房だったけど寒くなかったですか?「朝は少し寒かったですが、集中していくうちに寒さを感じなくなりました。藤井さんはいつも21度前後に設定していますが、対局が進むと全然気にならないです」

対局室のエアコンは21度に設定されていた

——この結果について。

「これだけ結果が出せるとは思わなかったです。前回(叡王戦五番勝負)のときよりも良い内容の将棋が指せたかなと」流れが悪い中、最終局を勝ってタフですよね。「残り2つで1勝できればいいと考えていたので、第4局を負けたことを引きずったことはないです」

——師匠への連絡は?

「(師匠には)連絡しました、今日(10月29日)が師匠の誕生日みたいで」最高の誕生日プレゼントじゃないですか。「ふふ、そうですね」と笑った。

——今後について。

「先のことは考えられないですが、ここ数年が勝負なので、もっと取り組んで結果を残したいと思います」と力強く答えた。

若くて優秀な才能が将棋の世界を変えていく

 常識や定跡やセオリーを捨てて、若くて優秀な才能がまっさらな目で考えれば、将棋の世界は、いままでと全く違ったものとして現れる。そのことを実感できた。

 2人はこれからどんな将棋を魅せてくれるのだろう。藤井世代と呼ばれるか、聡匠時代と呼ばれるか、2強といわれるか、あるいは藤井が取り返すのか、それはわからない。

終局直後の大盤解説会。これから聡匠時代となるのか

 わかることは、これからも何十年も、長きに渡って戦うことだけだ。

写真=勝又清和

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最初から記事を読む 「ええっ!」控室の棋士たちの予想が当たらない。藤井聡太王座は持ち時間5時間のうち、たった2手で135分も使った

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